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サッカー試合中の反則からラグビーが生まれたというのは大嘘!?

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2013.09.17

未だに信じられている「ラグビー発祥伝説」

数年前、ある超有名な中学教師ドラマで、こんなことを言う生徒がいた。

「ラグビーが生まれたのは、サッカーの試合中にボールを持って走り出した奴がいたからだぜ」

世の中にはなぜルールがあるのか、という授業だったが、この生徒の意見に主人公の教師は大きく頷いていた。ルールの必要性を教える授業なのに、なぜこの教師が頷くのか理解できなかったものだ。

この生徒が言う「ラグビー発祥伝説」が日本では信じられている。そもそも、日本ラグビー協会のHPにもそう書かれている。しかし、この伝説は嘘っぱちである。それがわかっているのに、未だにラグビー協会が喧伝しているのだから困ったものだ。ではなぜ、こんな嘘がまかり通るようになったのか?

エリス少年の伝説

イングランドのラグビー校には、こんなことが書かれた石碑がある。

「1823年、ウィリアム・ウェブ・エリスは当時のフットボールのルールを見事に無視し、ボールを持って走り出してラグビーの基礎を創った」

これがラグビー伝説の始まりで、現在のラグビー・ワールドカップの優勝杯は「ウェブ・エリス・カップ」と呼ばれる。つまり、エリス少年がラグビーの創始者とされているのだ。

だが、日本ではこの石碑にある「フットボール」の文言を「サッカー」と誤訳してしまった。海外ではフットボールといえばサッカーのことを指すから、という理由である。従って日本では「エリス少年はサッカーの試合中にボールを持って走り出した」と誤解された。

そもそも1823年の段階で、サッカーはまだ存在していない。エリス少年の反則でサッカーからラグビーが生まれたわけではないのである。

フットボールの起源

フットボールが始まったのは中世のイギリスだと言われる。数百人単位で村と村の対抗戦が行われ、動物の膀胱で作ったボールを思い切り蹴り込み、ボールを奪い合う壮絶なゲームだった。ある意味、サッカーよりもラグビー的な要素が強かったと思われる。

19世紀に入り、産業革命で社会的基盤が整えられてくると、イングランドの各パブリック・スクールでフットボールが行われた。もちろんラグビー校もその一つである。でも、各校でルールはまちまちだった。どの学校でも手の使用は認められていたが、ボールを持って走ること、即ちランニング・インは認められていなかった。

エリス少年が行った「見事なルール無視」とは、まさしくこのランニング・インのことだ。手を使ったから「ルール無視」だったわけではないのである。さらに、本当にエリス少年が最初にランニング・インを行った人物なのか、という確たる証拠はない。仮にこの伝説が本当だとしても、エリス少年の反則行為でラグビーが生まれたわけではないのだ。

ラグビー校でフットボールのルールが成文化されたのが、エリス伝説から22年後の1845年である。この時にランニング・インが合法化された。当時のフットボールとしては画期的なルールである。

ラグビーとサッカーが分化

だが、各校でまちまちのフットボール・ルールは試合をするのに都合が悪かった。そこで統一ルールを作ろうと、各校が集まって協議を重ねた。そしてケンブリッジ大学で「ケンブリッジ・ルール」が考案された。

この頃、イートン校はラグビー校とは逆にランニング・インはもちろん、手の使用を禁止するルールを成文化していた。これがサッカーの原型で、ケンブリッジ・ルールはこれに追随したのである。

伝統的なフットボールを守ろうとするラグビー派と、革新的なフットボール(サッカータイプ)を統一ルールとしようとするイートン派の間で対立が起きたが、結局イートン派が勝ち、1963年にフットボール・アソシエーション(FA)が誕生した。即ちイングランド・サッカー協会である。

敗れたラグビー派はFAから離脱した。つまり、エリス伝説からちょうど40年後に、サッカーとラグビーが別れたわけだ。ちなみに、サッカーの正式名称はアソシエーション・フットボールと言い、協会を意味するassociationから真ん中のsocにerを付けてsoccer=サッカーである。

要するにサッカーとは、アソシエーション・フットボールの短縮形というわけだ。これはラグビー・フットボールの略語であるrugger=ラガーと同じである。

だが、いきなり現在のようなサッカーが生まれたわけではない。FAが設立された当初は、ボールを手でキャッチすることが普通に行われていた。徐々に手の使用が制限されていって、ゴールキーパーとスロー・イン以外では手の使用を禁ずるという、現在の形になったのである。

いずれにしても、「サッカーの試合中に手を使ってラグビーが生まれた」というのは全くの誤りで、むしろ「ラグビー的な競技からサッカーが生まれた」というのが真相のようだ。

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