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やはり隠蔽していた統一球!「飛ぶボール」の歴史とは?

噴出した統一球問題

2013年6月、日本プロ野球(NPB)に「飛ぶ統一球」問題が発覚した。前年までの統一球より、2013年から飛ぶように微調整することを、NPBが統一球を製造しているミズノ社に指示していたのである。しかし、そのこと自体は悪いことではない。それを論ずる前に、なぜ統一球が導入されたのか、その経緯を見てみよう。

2006年からワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が始まり、世界で勝ち抜くためにはボールを世界標準に近付ける必要があった。それまでのNPBでは、球団が各メーカーに発注したボールを使用していたため、品質がバラバラだったのである。しかも、メジャーリーグ(MLB)で使用しているボールより、日本のボールは飛びすぎると言われた。

そこで、選手に評判の良かったミズノのボールを2011年からNPB統一球として採用した。この際、NPBはミズノに対し、反発係数を基準の下限値に近付けるように要請した。このこと自体も悪いことではない。だが、統一球が導入された2年間は極端な投高打低現象が起きたのだ。それでは試合が面白くないとファンからはもちろん、選手からも不満の声が上がった。

NPBは統一球を抜き打ち検査したところ、平均で下限値を大きく下回っていたという。そこでNPBはミズノに対し、基準値に近付けるように指示した。これも悪くはない、というよりも、至極真っ当なことである。

隠蔽こそが最大の問題

問題はここからだ。この変更に関してNPBはなんの説明もしなかっただけではなく、ミズノに対し「変更はない、と言ってくれ」と箝口令を敷いたのである。理由は「混乱を招くから」だったが、この箝口令のおかげで余計に混乱を招いてしまった。

「去年までのボールは平均で反発係数の下限値を大きく下回っていた。それをもっと基準値に近付けるようにミズノさんに要請した」と発表すれば、なんの問題もなかったのである。

ところがそれを隠蔽し、シーズンが始まると去年よりもやたらホームランが出るので、選手もマスコミもファンもみんな「今年はボールが飛ぶようになっているのではないか」と思っていたが、NPBはもちろん、箝口令を敷かれたミズノも「去年と同じです」と繰り返すだけ。

それが今になって「今年のボールは飛ぶようになっていました」と言われても、選手やファンは納得しないだろう。しかも、加藤良三コミッショナーの「私は知らなかった」発言が騒動に輪をかけた。知らなかったのなら、統一球に書かれている「加藤良三」のサインは一体なんのためにあるのだろう。

さらにその後、加藤コミッショナーは検査結果について報告されていたことが発覚した。もう、何をか言わんやである。政治家や官僚が国民をナメきってなんでも隠蔽するように、NPBも選手やファンを馬鹿にしているのだろうか。一番問題なのは、この件でNPBが何を言おうが、選手もファンもマスコミも、一切信用しなくなったことである。

過去にもあった飛ぶボール問題

NPBでは過去にも飛ぶボール問題があった。最初は戦後まもない1949年。戦後復興のためプロ野球を人気スポーツにしようと、ホームランを量産するために「ラビットボール」と呼ばれる飛ぶボールを使用した。

そのため、前年までホームラン王の本塁打数は25本だったが、この年は藤村富美男が倍近い46本塁打を放った。翌50年は小鶴誠がさらに上回る51本塁打。翌51年、あまりにも飛びすぎたためラビットボールは廃止され、最多本塁打は青田昇の32本に激減した。

次の「飛ぶボール」ブームは1979年、近鉄バファローズ(後にオリックス・バファローズと合併)が採用した、現在の統一球と同じミズノ製ボール。この頃のミズノ製ボールはよく飛び、近鉄は239本塁打という当時の日本新記録を打ち立てた。

ホームランを打った近鉄の打者が「打ったのはどんな球でしたか?」と訊かれ、「ミズノのボールです」と答えたという。ちなみに、当時の近鉄のエースだった通算317勝の鈴木啓示は、通算560被本塁打という世界ワースト記録保持者である。

それでも高品質な日本のボール

なにかミズノのボールを悪者にしてしまったようだが、決してそうではない。ミズノのボール、いや日本のボールは実に優秀なのだ。よく「世界で勝ちたいのなら、WBCやMLBの使用球をNPBでも採用せよ」という声を聞くが、これは完全に的外れである。

WBCやMLBのボールはツルツル滑る、という話を聞いたことがあると思うが、これはハッキリ言って質が悪いからだ。それだけではなく、アメリカのボールは品質がバラバラで一定していない。でも日本のボールは滑らないし、均一性が保たれている。

むしろ日本の統一球をWBCやMLBに売り込んでもらいたいぐらいだが、アメリカでボールを供給しているローリングス社が黙っていないだろうから、所詮は夢物語か。

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