120円で近畿一周の旅が満喫できる!大回り乗車という究極の裏技!
120円旅のルール
たった120円で近畿一周の旅ができます!なんて言うと、よっぽど悪質なキセル乗車の方法だと思うだろう。あるいは、「ハハーン、ヒッチハイクして運転手に缶ジュース1本おごるだけってことか」などと言うかも知れない。しかし、近畿一周のドライブをしている人もそう多くはいまい。
これはキセル乗車などではなく、合法的な列車の乗り方なのだ。JRのみに通用する方法である。東京の山手線を例にとって説明しよう。東京駅から初乗り運賃130円区間切符を買って、神田駅へ行くとする。普通なら上野方面行きの電車に乗れば1駅で済むが、逆回りの品川方面行き電車に乗りぐるっと一周して神田に行っても、運賃は同じ130円だ。
それを山手線にとどまらずJR各路線を通って大回り乗車するというのが、この旅の方法である。もちろん、そこにはちゃんとルールがあって、ルール違反がバレた時にはとんでもない違反金を支払わなければならない。以下がそのルールである。
●大都市近郊区間内であること
●一筆書きが絶対の条件で、路線を重複してはならず、一筆書きでも同じ駅を通ってはならない
●途中下車は無効。また当日中に全行程を終えること
●定期券は使用不可
大都市近郊区間とは、東京、大阪、福岡、新潟にあり、従ってこれらの区間では同様の旅ができる。特に東京近郊区間は他に比べて範囲が広いため、より広範囲な旅を楽しめる。だが筆者が経験したのは大阪近郊区間なので、そちらを紹介しよう。なお、大都市近郊区間の範囲はJR各社のホームページを参照されたい。
準備するもの
この120円旅は初乗り運賃で大阪府、和歌山県、奈良県、京都府、三重県、滋賀県、兵庫県の近畿2府5県全てを周るという大胆な行程だ。距離にして500km近く(東京―大阪間に匹敵)である。
それだけに、キセル乗車とは疑われないように行程表はちゃんと準備しておきたい。車掌さんが検札に回ってきた時に、キチンと説明できるようにしておこう。車掌さんもこのルールは知っているので、完璧な行程表があれば問題はない。
何しろ途中下車ができないのである。そんな旅のどこが楽しい、と思われる人も多いだろうが、ゆったりと車窓を流れる景色を楽しむのはオツなものだ。
また、せっかく列車の旅を満喫するのだから、駅弁を売っている駅をJR西日本のホームページでチェックしておこう。さらに、駅によっては立ち食いのそばやうどんも楽しめる。
もちろん、トイレのチェックも怠らないように。トイレがある駅や車両もホームページで確認できる。また、行き当たりばったりの旅が好きな人も多いが、ダイヤは調べておいた方がいいだろう。
さあ、近畿一周120円旅に出発だ!
始発駅はどこでもいいのだが、とりあえず大阪環状線の大阪城公園駅としよう。出発は朝早い方がいい。朝焼けに赤く染まる大阪城を見ながら、近畿一周120円旅の始まりだ!
まずは初乗り運賃120円区間の切符を買う。そこから環状線内回りに乗ればものの1分で次の京橋駅に着いてしまうが、今回の終着駅はその京橋駅である。この僅か1分で終わってしまう行程を、11時間以上もかけて周るのだ。従って、最短距離とは逆の環状線外回りに乗る。
以降の道程は、以下の通りである。
大阪城公園(大阪府)<大阪環状線>
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天王寺(大阪府)<阪和線>
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和歌山(和歌山県)<和歌山線>
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高田(奈良県)<桜井線>
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奈良(奈良県)<大和路線>
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加茂(京都府)<関西本線>
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柘植(三重県)<草津線>
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草津(滋賀県)<東海道本線>
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米原(滋賀県)<北陸本線>
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近江塩津(滋賀県)<湖西線>
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京都(京都府)<JR京都線>
↓
大阪(大阪府)<JR神戸線>
↓
尼崎(兵庫県)<JR東西線>
↓
京橋(大阪府)
まあ、これほど無駄な行程もあるまい。京都府や大阪府など行ったり来たりしている。しかし、この無駄こそが120円旅の真骨頂だ。色んなルートを調べて、またそれを実行するのも楽しい。あるいは、この逆ルート、即ち京橋駅から出発して大阪城公園駅を終着駅とすると、また全然違う旅が楽しめる。
筆者が体験したのは、このルートとはやや違うが、それでも充分楽しめた。実行したのは3月下旬の早春で、同じ近畿地方でも、これほど季節が違うのか、と実感したのである。午前中に通った和歌山では南国らしく陽光が降り注ぎ、早咲きの桜まで咲いていた。
ところが夕方近くなって琵琶湖周辺を通ると天候は一変、凄まじい雪にさらされていたのだ。湖北の近江塩津はもう福井県が目の前、気候的には日本海側と言ってもよかった。
南国の和歌山県と、日本海に近い滋賀県北部。同じ近畿地方でありながら、僅か半日のうちに全く違う貌(かお)を見せてくれたのだ。途中下車なんてできなくても、これだけで充分に価値がある。
旅が終われば……
終着駅の京橋駅に着いたら、自動改札は通らないようにしよう。自動改札の脇にある駅員室を通って、駅員さんに「この切符を記念にください」と言えばいい。そうすれば駅員さんは切符にハンコを押してくれるので、切符はあなたの物になる。近畿一周120円旅の、何よりの記念となるだろう。
そして、友達同士で120円旅を行ったのなら友達と、一人で行ったのなら一人で祝杯を上げよう。このバカバカしくも素晴らしい旅を達成したのだから。何しろ京橋といえば、大阪を代表する庶民的な歓楽街である。ただし、いくら安いといっても、120円を遥かに上回る出費になるだろうが……。
注:ルール等は各自でもう一度JR各社のホームページなどで調べ、自己責任で旅を行ってください。この旅で違反金等が発生しても、当方は一切の責任を負いません。