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タイガース人気を支えたのはサンテレビだった!地方テレビ局の底力

かつてはダントツの人気だった巨人

日本プロ野球でトップクラスの人気を誇る阪神タイガース。2012年は5位に甘んじ、優勝した読売ジャイアンツに観客動員数1位の座を譲ったが、常に優勝争いに加わるようになった21世紀以降は、巨人を上回る観客動員数を記録していた。

今のファンにとっては珍しくもないと思えるかも知れないが、実はこれはとんでもないことなのだ。巨人の観客動員数を上回るチームなんて、20世紀では考えられなかったのである。

巨人は「球界の盟主」と呼ばれ、実力はもちろん人気でもダントツだった。かつての本拠地・後楽園球場はいつも超満員、ゴールデンタイムの全国中継は常に巨人戦で、視聴率も必ず20%を超えるキラーコンテンツだったのである。プロ野球ファンのうち、巨人ファンが6割、阪神ファンが1割、それ以外の10球団で残りの3割を分け合う、とさえ言われたものだ。

阪神ビイキ、完全中継のサンテレビ

ではなぜ、阪神は巨人人気を逆転することができたのか?その基礎を作ったのは間違いなくサンテレビだろう。

1969年、サンテレビが開局した。巨人9連覇半ばの頃である。実はその頃の阪神はさほど集客力があったわけではなかったが、兵庫県を視聴エリアとするUHF局のサンテレビは、兵庫県西宮市にある阪神甲子園球場を本拠地とする阪神戦の中継を始めた。もし甲子園が大阪府に造られていたら、サンテレビは阪神戦を放送しなかったかも知れない。

後に同じ西宮市にある阪急西宮球場を本拠地とする阪急ブレーブス(現在のオリックス・バファローズ)戦の中継も始めたが、やはり阪神戦が中心だった。常に巨人と優勝争いをする阪神戦が魅力だったのだろう。

サンテレビは阪神ビイキの放送を徹底した。中立性が求められていたテレビ放送では異例のことである。日本テレビでの放送が巨人ビイキに聞こえることがあるが、こちらは中立性を保とうとしてもつい本音が出る、というものだろう。だがサンテレビは地方局をいいことに、堂々と(?)偏向放送をし続けたのだ。

サンテレビはもう一つ、革命的な放送を始めた。それが現在まで続く完全中継である。当時のプロ野球中継といえば、午後7時半に始まり午後9時には試合途中だろうと放送終了となる。しかしサンテレビは「試合開始から試合終了まで」放送し続けたのだ。東京キー局の傘下に属さない地方局の特色をフルに活かしたのである。

阪神を愛し、阪神ファンに愛され続けたサンテレビ

サンテレビは兵庫県以外でも大阪府のほぼ全域で視聴可能だ。大阪での阪神ファンも確実に増やし、関西ではダントツの人気を得るようになる。

73年、阪神は9連覇を狙う巨人と最後までデッドヒートを繰り広げ、甲子園での最終戦で阪神が勝つか引き分ければ優勝、負ければ巨人の優勝が決まるという大一番となった。

しかし阪神は0-9で惨敗、怒った阪神ファンがグラウンドになだれ込むという大惨事。阪神ファンはあたりかまわず暴れていたが、サンテレビのクルーを見つけると「サンテレビだけは俺らの味方や!」と襲撃しなかったという。

それでも当時の阪神戦は、それほど客が入っていたわけではなかった。70年代までは甲子園が満員になるのは巨人戦だけで、それ以外のカードではガラガラ。観客数5千人なんてこともザラだった。今では考えられないぐらい、甲子園には閑古鳥が鳴いていたのである。でも80年代に入ると、サンテレビ効果が出始めたのか巨人戦以外でも客が入り始めた。

85年に阪神が日本一になって阪神フィーバーが巻き起こった。この年からサンテレビは朝日放送(ABC)と提携するようになる。ABCが放映権を持っている曜日でも完全中継ができるように、両局でリレー中継するようになったのだ。ABCで放送できない場合は、制作はABCでサンテレビが丸々完全中継することもあった。

90年代になると阪神は暗黒時代を迎えた。阪神は毎年のように最下位だったのだ。しかしサンテレビは阪神戦の中継を続けたのである。サンテレビは阪神と資本関係にはないのだが、それでもボロボロになった阪神を応援し続けた。

21世紀に入り、阪神は常に優勝争いを演じるチームとなった。現在ではカードに関係なく甲子園は常に満員。もちろん、阪神が強くなったからであるが、それだけではないだろう。常に阪神戦を中継してきたサンテレビの存在があってのことだ。サンテレビは暗黒時代も阪神を決して見放さず、放送し続けた。それが現在の阪神人気の下地となっているのは間違いない。

プロ野球中継はCS放送が主流となった現在でも、阪神ファンのCS加入率は低いという。もちろん、サンテレビが地上波にもかかわらず阪神戦を完全中継しているからだ。無料で完全中継してくれるサンテレビほど有難い存在はない。今後、阪神が下位に低迷しても、サンテレビは阪神戦を完全中継し続けるだろう。

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