あの映画にも登場!! BARでの最後の一杯に~X
一日の終わりに、最後の一杯に、明日への景気付けにピッタリな名前のハードボイルドカクテル…それはX.Y.Z。クールで硬派な男のカクテル。
ベースはラム。そこにコアントロー(ホワイトキュラソー)とレモンジュースを入れ、シェイカーで空気を含ませながら混ぜ、冷やしたグラスに提供する。
このレシピはショートカクテルの王道とも言えるレシピで、ベースがウォッカに変わればバラライカ、ジンならホワイトレディ、ブランデーならサイドカー、テキーラならマルガリータとなる。
味わいはシンプルでラムの独特の甘みと香りがメイン。そこにコアントローのオレンジ果皮の香りと苦味、レモンの爽やかな香りが絶妙なハーモニーを奏でる。サッパリとしていながらパンチのあるアルコール度数がなんとも男らしい。
そしてこのX.Y.Zは松田優作主演の映画、「野獣死すべし」に登場するカクテルとしても知られている。
あまりにも有名な映画だが、男子としては是非一度は観ておきたい一本。とにかく松田優作が文句なしにカッコいい。
そして映画全体を取り巻くゴツゴツした質感の中にヒヤリとしたナイフのような緊張感があり、軽い気持ちで観るとこの作品の世界観に押しつぶされてしまいそうになる。
最近の映画にはなくなってしまったが昔の映画には濃密な時間と空気が凝縮されていた。この一本もそういった「重たい」映画のひとつでもある。
物語の中で、一人の刑事が銀行強盗の逃亡犯である松田優作を追いつめていくのだが、列車の中で逆に松田優作に拳銃を突きつけられてしまう。
その時の松田優作のセリフの中に登場するのが「X.Y.Z-これで終わり」という意味のこのカクテル。「ラム…コアントロー…レモンジュース…」とおどろおどろしく語りかける松田優作の迫力は圧巻である。
このX.Y.Z、飲んだことのある人はご存知かと思うが、飲み口はサッパリだがアルコール度数は高め。油断していると足元をすくわれかねない。
レモンジュース以外は酒なのだから酔いが回って当然なのだが、この強いカクテルを涼しい顔をして飲むのがハードボイルド。
ちびちび舐めながらも、最後の一口はグッと飲み干したい。ショートカクテルの「ショート」はグラスがショート(短い)という意味だけではない。飲む時間がショート(短い)という意味もあるのだから。
いつもは「もう一杯作りましょうか」と催促してくるバーテンダーにも、「これで終わりにしてくれ」というあなたのメッセージが伝わるに違いない。スマートに切り上げて明日もよい一日を迎えようではないか。