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サッカーとラグビーには「イギリス」はないの?伝統国の複雑な事情

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2014.04.28

イギリスの正式国名は?

 サッカーやラグビーを見ていると、イギリス代表というチームはあまりお目にかかれない。もちろんオリンピックのサッカーではイギリス代表は存在するのだが、ワールドカップや五輪絡みではない国際試合では「イングランド代表」はあっても「イギリス代表」はない。

 これはイギリスという国の特殊性が大きく関わっている。日本より狭い島国ながら中央集権国家ではない。イギリスの正式国名は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」という、実に長ったらしいものだ。要するに連合王国というぐらいだから、いくつかの国が集まっている、という意味である。英名ではUnited Kingdom of Great Britain and Northern Irelandで、UKと略す。ちなみにイギリスのことを「イギリス」と呼ぶのは日本だけだ。

 正式国名にあるグレートブリテンとは、国土の大部分を占める島のことで、島としては世界第9位の大きさだ(日本の本州は7位)。単にブリテンというと、それはイギリスそのものを指すことが多い。

 グレートブリテン島には3つの“国”がある。最も面積が広いイングランド、島の北部を占めるスコットランド、南西部の最も小さいウェールズだ。イングランドはアングロサクソン人、スコットランドはスコット人、ウェールズはケルト人という、一つの島の中で異なる民族がしのぎを削っていたわけだ。

 さらに正式国名を見ると「北アイルランド」という文言がある。これはグレートブリテン島の西側にあるアイルランド島の北部、という意味だ。従って、イギリスとはグレートブリテン島とアイルランド北部から成り立っている連合王国、ということがわかる。

 では、アイルランド島の南部とはなにか。北アイルランドを除く、アイルランド島の大部分はアイルランド共和国という独立国だ。元々はアイルランド島全体もイギリス(UK)の一部だったが、1922年に北アイルランド以外はイギリスと分離して独立した。従って、アイルランド島には国境が存在する。

サッカーにおけるイギリスの代表チーム

 サッカーはイギリス国内ではイングランド代表、スコットランド代表、ウェールズ代表、北アイルランド代表という4つの代表チームがある。これは前項での国の分け方と全く同じだ。当然のことながら、それぞれにサッカー協会がある。

 中でも特別なのがイングランド協会だ。他の国には、例えばスコットランド協会ならThe Scottish Football Association というように国名が付くが、イングランド協会はThe Football Associationと国名が付かない。こんな協会は世界中でもイングランドだけだ。そこにはサッカーの母国たる誇りすら感じる。もっとも真相は、イングランド協会が発足したときは他国(スコットランドなど)にはサッカー協会がなかったのだから、国名を付ける必要がなかった、ということだろうが。それにしても、ザ・フットボール・アソシエーションという協会名なら、まるで世界を統括する団体みたいではないか。

ラグビーにおけるイギリスの代表チーム

 では、ラグビーの場合はどうか。こちらはイングランド代表、スコットランド代表、ウェールズ代表、アイルランド代表の4つに分かれる。なんだ、サッカーと同じじゃないか、と思うかも知れない。だが、よく見て欲しい。アイルランド代表には「北」が付いていないのである。

 では、アイルランド共和国代表なのか?そうではない。ラグビーにおけるアイルランド代表とはアイルランド島代表、即ち北アイルランドとアイルランド共和国を合わせた、言わば2ヵ国からなる代表チームなのだ。なぜそうなったのかはわからないが、アイルランド協会はアイルランド共和国が独立する前からあったので、そのまま続いているということだろう。国の分裂と共に北アイルランド代表とアイルランド(共和国)代表に分かれたサッカーとは対照的だ。

 なお、イングランド協会はサッカーと同じようにRugby Football Unionと世界で唯一、国名が付かない。これもやはりラグビー発祥国なので、発足時には他国にラグビー協会がなかったという現れだろう。

ラグビーにおけるイギリス代表?

 さらにラグビーではブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズというチームが4年に1度、結成される。イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの4ヵ国によるオールスター・チームで、南半球のニュージーランド、オーストラリア、南アフリカへ持ち回りで遠征するのだ。ちなみにこの4つの協会のことを「ホームユニオン」と呼ぶ。

 ホームユニオンによるブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズこそがラグビーにおけるイギリス代表のようにも思えるが、実際にはアイルランド共和国も含まれるので、やはり純粋なイギリス代表とは言えない。

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