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「反対意見を持つから敵」はフェアじゃない。米金融王ジェイミー・ダイモン氏が大学卒業生におくったスピーチ

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2015.07.31

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出典:How to Be Accountable: Jamie Dimon University Commencement Address (2010) – YouTubeより

人の上に立つ人間であるには~ジェイミー・ダイモン氏(アメリカの大手銀行JPモルガン・チェースの会長及び最高経営責任者)から、大学を卒業する若者へ送る言葉。

卒業式という社会人の入り口でこのスピーチを聞ける事はとても有意義だと思います。

※出来るだけ言葉の雰囲気を残す為に少し癖のある翻訳になっている部分もあります、予めご了承ください。

ジェームズ・ダイモン(James “Jamie” Dimon、 1956年3月13日 – )はアメリカ合衆国の実業家。アメリカ合衆国の四大銀行の一つであるJPモルガン・チェースの会長および最高経営責任者を務めている。

また2015年には銀行経営者として異例のビリオネアの仲間入りをしています。(個人資産10億ドル(約1240億円)

引用・・・ジェームズ・ダイモン – Wikipedia

2010年卒業生に向けて、ニューヨーク州セラキュース大学卒業式でのスピーチ

ご紹介いただきありがとうございます。大学関係者の皆さん、卒業生たちのご家族、ご両親、そして2010年卒業生の皆さん、今日はこの素晴らしい門出の日を一緒にお祝いできることをとてもうれしく思っています。

特にご両親は、こうして学生の皆さんが無事に卒業されますことに胸をなでおろしていらっしゃることでしょう。学生の皆さんは、数々のテストをこなし、レポートをすべて提出し、難問に答える準備をするため、緊張と焦りで眠れぬ夜を過ごしてきたことと思います。

それは私たち銀行の人間にも共感できることです。銀行にも、「国会での業務報告」というものがあるからです(会場笑い)。

本日、ここでスピーチさせていただけることをとても光栄に思っていますが、同時に私がゲストスピーカーに選ばれたことに疑問を持つ学生さんたちもいる、ということも伺っています。

私がこの場に招かれたことに対する反対運動のことを聞いたとき、是非彼らの意見を聞きたいと思い、反対運動の中心人物のひとりに連絡を取りました。

そして、電話で話し合いをすることができました。マリア、ここに来ているよね?元気かい?反対運動は、私自身とこの国の銀行システム、そして資本主義社会に対しての危惧によるものでした。

話し合いの中で、道理にかなった意見も、また私としては反対な意見もありました。しかし、私が彼女の意見に賛成しようとしまいと、彼女の行動は立派だったと思います。実際、私をこの国の銀行のあり方に対して重要な責任がある人物だ、と認めたことはごく当然のことだからです。

必要なのはまず失敗を恐れない「勇気」

私たちは、皆、認められるべき価値があるのです。あなたたちの中にも、いつか社会で認められる重要な責任のある人間になりたい、という野望を持つ方も多いでしょう。

では、「人の上に立つ人材」になるにはどうすればよいのでしょうか。一言断っておきますが、私は、私自身がまったく間違いを犯さなかった、いつも正しい判断をしてきた、とは言いません。むしろ、間違いを犯すことで、多くのことを学んできました。

人の上に立つには、勇気が必要です。私は、自分の人生の中で、数多くの人々が周りに流されて、間違った選択をし、恥をかく姿を見てきました。

また、大きなプレッシャーの中でも、常に正しい選択をしてきた人々もいました。大学を卒業するということは、この素晴らしい環境から抜け出して、社会に旅立ち、新しい仕事、新しい可能性、そして新しい人生を歩むということです。
これから、あなたたちは何度も大きなプレッシャーに押しつぶされそうになることがあるはずです。

なあなあで済ませてみたり、間違いを見て見ぬふりをしたり、周りのみながそうしているから自分もやらなきゃいけないようなプレッシャーがあることと思います。

どうか決して、そのようなプレッシャーに負けないでください。「ラクなこと」ではなく、「正しいこと」をする勇気を持ってください。誰かのペットや、太鼓持ちにならないでください。

たとえそれが少数意見だとしても、真実を語る勇気を持ってください。そして、たとえ負け戦になろうとも、自分で矢面に立つ勇気を持ってください。

ルーズベルト大統領はこう言いました。

「賞賛に値するのは、評論家でも見物人でもない。実際に戦いの場に立ち、血と汗と泥にまみれ、何度も成功を逃した人物である。情熱を持ってその身をささげ、果敢に挑戦し、たとえ負けたとしても、彼の、または彼女のその行動は何もせずに勝利も敗北も知らない臆病者たちとは一線を超すものなのである。」

反対意見を聞くことで得る「知識」

人の上に立つためには、知識も必要です。自分の意見を言うのは大切ですが、それだけでは十分ではありません。もし、あなたが自分の意見を押し通すに値する価値があると思うのであれば、それを裏付ける確固たる理由を持つべきです。

時として、その答えが明らかである場合もあれば、非常に困難な場合もあります。私たちは、単純な答えを出そうとしてしまいがちです。ただ、アインシュタインの言葉を思い出してください。「物事は、単純であるべきだ。しかし、あることをさらに単純化さてはいけない。」

人生は常に勉強です。学ぶことをやめてはいけません。本を片っ端から読んでください。たくさんの人と意見を交換してください。特に、自分と反対の意見を持った人の話を聞くことで、学ぶことは大きいのです。あなたが人生を歩む上で必要な知識を得ることは、あなた自信の責任なのです。

あなたが社会主義であれば、有名な資本主義者であるミルトン・フリードマン(Milton Freidman)の本を読みなさい。あなたが資本主義者であると思うなら、カール・マークス(Karl Marx、ドイツの社会主義者)の本を読むといいでしょう。あなたが共和党主義者であるなら、民主主義者の意見を聞きなさい。逆もまたしかりです。反対意見から耳を背けることなく、相手の主張の本質を見極めてください。そして自分の意見に凝り固まらず、柔軟であってください。

相手の意見に納得しないこともあるでしょう。だからといって、反対意見を持つ人がすべて同じであると決めつけるのはいけません。反対意見の一部の人の話を聞いたからといって、その一部の所属するグループ、会社、CEO,政治家、メディア、学生などすべての人を否定してはいけません。自分とは反対の主張をする人たちの中にも、素晴らしい人もいればろくでもない人もいるのです。反対意見を持つからと言って、その人たちすべてを敵とみなすのはフェアではありません。大きな間違いです。(会場拍手)

「正直」であるために、努力する

人の上に立つには、自分自身に正直でなければなりません。シェイクスピアも言っています。「自分自身のために、正直であれ」と。

あなたたちの自伝は、すでに存在しているのです。もし私があなたたちのことを知りたければ、あなたの先生やご両親、友達や同僚に話を聞けばいいのです。

私は、あなたが信用できる人材か、勤勉であるか、仕事ができるか、または怠け者で、期待に添わない人間であるかといったことがわかります。

その「自伝」に、あなた自身をどのように描くかはあなた次第なのです。あなたがこうありたいと思う人間になってください。もし成功したければ、自分のベストを目指してください。そのためには、必ず努力が必要です。

リンカーン大統領は「家宝は寝て待て。しかしその家宝はてきぱきと動いた人の余りものだが。」と言いました。

リーダーになりたければ、リーダーらしく振舞ってください。もし、人から尊敬される人間になりたければ、日々努力して人の信頼を得てください。もし人から正直な人間と思われたければ、真実を曲げず、自分自身を欺かないことです。

「失敗」を生かす力

人の上に立つ人間になるためには、失敗を生かす力を持つことが必要です。この世界は非常に複雑で、厳しくもあります。経済は回復してきてはいますが、就職状況はまだまだ厳しいことでしょう。

ただ、あなたたちは人生の色々な場面で、厳しい状況に立たされたり、失敗したりする事があるはずです。もうすでに、そういったことを経験した人もいるでしょう。失敗をどのように生かすことができるか、ということが、あなたが成功するか否かの一番大事な鍵かもしれません。

ネルソン・マンデラ氏、ガンディー氏、リンカーン大統領などの偉大な人物は皆、回避不可能と思われるような危機に直面しています。皆さんがすでにご存じのように、金融業界は過去2年、最悪とも言われる大不況に見舞われました。それは、不況の責任の一端を持つ者たちが状況をさらに悪化させてしまうような状態でした。

このような不景気に対応するには、まず何が間違っていたかを理解することが重要です。中には、間違いを認めず、責任を放棄した者もいました。しかし、この真っ暗闇のような状況に立ち向かった人たちもいます。

私の会社の社員たち、他の社の社員たち、そして各国の政府はきちんと向き合い行動を起こしました。彼らは直接打ちのめされながらも、回復に向けての努力を惜しまなかったのです。

働きづめて家族や友達との自由な時間を犠牲にし、なんとか不況を抑えようとしてきました。彼らは昇給のためでも、上司にいい顔をするためでもなく、不況によって打撃を受ける多くの人々のダメージを少しでも減らすために頑張ってきたのです。

彼らはどんなに厳しい状況でも、落ち着いて行動することを心がけてきました。

私はJPモーガン・チェイスのCEOになる前、CITIグループ(シティバンク銀行)の社長でした。ちなみに10年前のことです。ある日、出社したら15年間ともに働いてきた上司から、突然解雇を言い渡されました。

その日、帰宅して妻と3人の娘たちにそのことを報告したときのことをまだ覚えています。彼女たちは、当然ですがショックを受けていました。当時8歳だった一番下の娘、ちなみに彼女は来年ここを卒業する予定ですが、彼女には「お父さん、私たちホームレスになるの?この家を出ていかなきゃいけないの?」と聞かれました。

真ん中の娘には、「お父さん、私は大学に行くことができるの?」と聞かれました。私は彼女たちに、もちろん大丈夫だ、心配いらない、と答えました。そして長女は、「お父さんの携帯電話をもらってもいい?もう必要ないでしょ?」と聞いてきました(会場笑い)。

この立ち直りの早さは見習いたいものです(会場笑い)

うまくいかないことはあります。でも、あわてて間違えた判断をしないでください。逆境に見舞われたとき、しばらくの間は落ち込んで他人を責めてもいいのです。ただ、そこから立ち直らなければいけません。失敗から学び、前に進まなければいけないのです。(会場拍手)

「謙遜」と「人間性」

人の上に立つ人材であるためには、人間性が必要です。私たちがここにあるのは、先駆者の努力があってこそです。私たちの前に、足場を固めてくれた人たちがいることに感謝しなければなりません。

成功が、自分ひとりのものだと勘違いしてはなりません。あなたの成功は、あなたのために犠牲を払ってくれた両親や家族、学校の先生方、あなたを励ましてくれた友達や周りの人々の協力のたまものなのです。

実際、この素晴らしい国は、私たちの生まれる以前にたくさんの人々の犠牲が払われた上で成り立っているのです。私たちはそのことに感謝しなければなりません。

同時に、自分自身の責任の重大さに耐える精神力が必要です。卒業生の方たちは、これから社会に出て自らの道を歩むわけですが、この先、うまく物事が進めば、多くの部下を持つリーダーになる人もいるでしょう。

その時には、自分のことではなく部下たちのことを考えなければなりません。リーダーシップというものは、名誉であり特権であり、重大な義務なのです。

人生の中で、あなたは自分より能力の劣る人に出会うこともあるでしょう。彼らはあなたほどのチャンスを与えられることはないかも知れません。ですが、彼らの多くはベストを尽くし、プライドを持って与えられた仕事をこなしています。

人の上に立つ人間であるには、相手がCEOであろうと事務員であろうと、真面目に働く人々に尊敬の念を持って接しなければなりません。そのためには、相手を思いやる精神が必要です。

人の上に立つ人間として成功するには、優れた人間性を持ち、寛大でなければいけないと思っています。私の好きなラドヤード・キップリング(イギリスの小説家、詩人)の言葉を借りると、

もしあなたが他人から非難され、責められても冷静でいられるなら、もしあなたが、自分の美徳を見失う事なく多くの人に話をすることができるなら、もしあなたが庶民の心を持ちながら王様と歩むことができるなら、この世界につまっているすべてはあなたのもの
ラドヤード・キップリング

人生を豊かにすることは、国を豊かにすること

以上、人の上に立つ人間であるには、「勇気」「知識」「失敗を恐れない精神力」「人間性」が必要というお話をしてきました。これらのことは、この国をよりよくするためにも大事なことです。

最後になりますが、この国が豊かであるためには、一人ひとりの努力が必要です。歴史を勉強した人ならおわかりでしょうが、アメリカは過去にも多くの危機に見舞われました。それでも、こうして立ち直ってきたのです。今、私たちの抱える問題はいずれ解決するでしょう。

しかし、次の世代を担うあなたたちも、この国をよりよくするために引き続き努力していかなければなりません。特に、教育に関しては積極的に取り組まなければいけません。高校の卒業率がたったの50パーセント、などというのは許されるべきではないのです。

私たちは環境問題とエネルギーの確保にも力を注がなければいけません。未来へつなぐ基盤を作っていかなければならないのです。これらの問題は、私たちが力を合わせれば解決することができるはずです。私たちには皆、人生で起こりうる問題を解決する力が備わっているのです。

私たちがこの国に生まれたことはとても恵まれたことではありますが、同時に大きな義務も背負っています。あなたたちがこれからの人生を歩む中で、あなたと触れ合う物、知り合う人々のすべてを少しでもよくしようと努力してみてください。自分に正直であり続けてください。

傲慢にならないでください。自分の価値を貶めないでください。これらのことで、あなたはあなたの人生だけでなく、この国の未来をもよりよくすることができるのです。

卒業生の皆さん、おめでとうございます。成功をお祈りいたします。ありがとうございました。

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