無駄になっていませんか?元損保マンから見た損害保険の賢い掛け方
保険会社の社員として友人達の保険の掛け方を見ていると『間違っている』と思うことが多々ある。金融緩和が起こり、金融機関の垣根が低くなった。従来生命保険会社は、後発外資系社が取扱商品を先発国内社より広く持つことで市場での公平性を保とうとしてきた経緯がある。
それに対して損害保険会社は護送船団方式をとっていた。公正の観点から保険加入者の期待される利益を守るためだ。どこの保険会社に加入しても保険料は大差なかった。保険会社は加入者のために適正な損害調査が十分にできる体制を拡充してきた。
そして補償されるべき事故は、偶然、突発、外因の三つの要素が満たされる事故となっている。基本的に、恒常的に発生するビジネスリスクや期待値は保険対象とはならない。通常、いつも運送時に3%の野菜が傷むなら保険事故とはならないし、売れれば儲かる新製品の見込利益も保険事故とはならない。
世間的には損害調査には支払削減のイメージが付きまとう。よく「保険会社は柱一本にならないと保険金を支払わない」と言われる。難解な保険用語で固められた約款に支払わない言い訳の落とし穴があるのだと思われている。ここで、よく言われる落とし穴や新しく変わった点などを整理してみる。
火災保険の落とし穴
最近の火災保険は実損補償の保険が多いが、従来の火災保険は比例補償になっている。例えば3000万円の家で台所に火事があり500万円の損害が出た場合は、支払われるのは83万円だ。残りの417万円は被害者の負担になる。公平性の観点から3000万円の保険を付けるべきところを500万円しか付けていないのだから支払額も相当の支払になる。
この比例填補の解釈が伝えられずに保険加入しているケースが多く誤解を生んでしまっている。また最近は新価を減価償却した評価額よりも修理額がはるかに上回る場合もあり修理額を支払う保険も出てきている。
家財の保険も誤解を生んでいる。「200万円で絵を買ったし。45万円で高価なAV機器を買ったから600万円くらいの保険を付けておこうかな」残念ながら絵もAV機器も支払いは30万円が限度になる。30万円を超えるものは明記物件として保険会社に報告しなければならないことになっている。
海外旅行傷害保険の落とし穴
「今度、モルディブに行くのだけれど、新調したダイビングコンピューターが18万円だから30万円コースだったらダイビング中に壊れても安心だね」これも残念ながら18万円を支払われることはない。損害保険では動産と携行品を区別する。動産の明記物件は30万円だが、携行品は10万円が限度となっている。それ以上支払われることはない。
また事故内容でもダイビング中の水没事故は持たないことが多い。水中カメラなどはハウジングに髪の毛一本や塵のような埃がOリングに挟まっただけで簡単に水没事故となる。ダイビング機材専用の保険であれば水没事故を補償してくれる場合もあるが、通常の海外旅行傷害保険では補償されない。
自動車保険の落とし穴
不況が長引いていることもあり、近年は数万円の事故でも保険を使うケースが増えている。十年以上無事故であれば最大割引率まで進んでおり、自腹で修理するよりも保険を利用する方が安上がりだからだ。バンパーの板金修理で3万円かかり保険を利用したところで保険料は数千円の値上がりで済み、二年後には最大割引率まで進む。
しかし昨年11月からは割引制度の仕組みが変わった。保険を利用すれば三年間、別の割引表が適用される。つまり三年間は割高な保険料になる。既に適用されている割引にもよるが、5~10万の損害であれば保険を利用しない方が安上がりになっている。
自動車保険の保険料は自動車料率算定会のデータをもとに決定されているが、近年の保険会社各社の総支払額は増加傾向にある。支払いが増えれば、保険料が上がってしまうという仕組みだ。自動車事故となった場合には損害額によっては保険金を使わない方が良い場合が増えている。