どんな悪人でも、最後のプライドまで砕かない優しさを!~後編~
半沢直樹が役員会議で大和田常務の悪行を暴いただけで我慢していたら?
頭取は、大和田常務の追い落としを図っていたのではないかと思うのです。その為に大阪スチールの5億の融資焦げ付きを回収した半沢の力量を買い、伊勢志摩ホテルの120億の不良債権の回収を金融庁検査までに何とかするように、と命令します。
その時から大和田常務のことに勘付いていて、伊勢志摩ホテルの件を解決する過程でその不正の証拠を掴んでくれれば、というような淡い期待もあったのかもしれません。自分の地位を脅かす大和田常務派を壊滅させ、銀行の膿を出したかったのかもしれません。その為に半沢直樹を利用したのでしょう。
人望と調査能力のある半沢直樹を駒に自分の出世を考えていた頭取にとって、会議室で自分の制止を振り切り大和田常務を土下座させてしまった行動に常軌を逸した物を感じ、恐ろしくなったのでしょう。この点で、半沢直樹を自分の側近に使うのは止めたのでしょう。
それよりも大和田常務の銀行員としての能力を認め、自分の目の届くところに置き懐柔する方が有利と思ったのでしょう。下手な人望は反対勢力を作りかねません。
でも、もしあの時半沢直樹が大和田常務を土下座させなかったら、半沢直樹は2階級特進で大出世したかもしれません。そして頭取の片腕として大活躍したことでしょう。これは企業人として上手に生きるコツです。でも、人間としてはどうでしょう。
父親を自殺に導いた融資は銀行の焦げ付きを埋める為の詐欺のような融資だったこと、雨の中土下座をして融資引き揚げをとどまってもらうよう必死でお願いし、自殺してしまった父の恨みを晴らす為に、その時の銀行員、大和田がいる銀行に入社したのです。
半沢直樹の目的はどこにあったのでしょう。大和田を潰すことにあったのか、父のような銀行の犠牲者が出ないように銀行を変えようとしていたのか、お話の中では不明です。大和田を潰すことで満足なら、土下座させてもOKでしょう。その代わり、自分は目的を果たしたのですから、銀行を辞めて実家の工場を継げばいいのです。それはそれでいいと思います。
でも会社に残るなら、企業のモラルとして、役員会議室は自分の恨みを爆発させる場所ではなく、公の場であることをわきまえなければなりません。上へ行きたいなら、ビジネスマナーが優先し、自分の感情は二の次となります。
どんな相手にも家庭があります。人間として最後の優しさとして、最後の逃げ道を残しておいてあげないと恨まれます。第2の半沢直樹を作ってしまうのです。このような敵を作らないことが出世のコツなのです。