外国人が不思議に思う、日本人特有の「癒し」という感覚の心理
三年前、彼女と『癒し』の話で意見が対立した。英語では『癒し』=ヒーリング、精神や肉体の回復をさす事だと思っていたが、彼女が『可愛い=癒し』、『心地良くさせる=癒し』とも考えられると反論したため、意見の対立となった。
『癒し』という言葉には、仕事上の思い出がある。元々、『癒し』は宗教用語で、科学的に説明できないミラクル治療のことだ。精神や心理面での治療を指していた。
それが1980年後半の『癒しブーム』で、安らぎを与えるもの=癒しとなった。彼女の『癒し』の根拠は、男の安らぎ=愛でる人や物が近くにある事や居心地が良く欲求を満たす環境が提供される事も含まれていた。
『癒し』は女性を口説く魔法の言葉?
会社員時代、飽和市場となった市場に対して市場の創出が仕事の一つとなった。ハードよりもソフトの市場検討のため、メディアソフト会社の取材をした時、価格が争点となった。
数多くのソフトに『癒し』という言葉が使われていた。中には不適切と思えるものにまで使われている。『癒し』が回復を指すなら癒される者は動きが少ない筈だが、性的な事は激しい動きを伴っているからだ。
ソフト会社の方から「言葉はメディアが作るモノ」「女性に近づくのに『癒される』は魔法の言葉」と説明され、期待値も織り込んだ価格設定となっていた。
あれから20年、もう倒産してしまったが、人の心を見透かしたようなセリフが印象に残った。冒頭の彼女も、魔法の言葉として使われるべきではないと言い、あらゆることに『癒し』の言葉を使うのは反対だった。
『癒し』は、可愛らしい事?
アイドルにも女優にもウエイトレスにも『癒し』が使われている。使われ方は、見ていると和やかな気分になる時に使われている。最近は、可愛い=『癒し』と使っている場合が多い。おっとりしていて和やかな気分になる事だ。
昔、CMでドリンクメーカーが『ほっこり』という言葉を使っていたが、それ以上に可愛らしさを追求した場面での使用が多い。彼女は、現在使われている言葉の意味がそうなっている、と断言していた。
『癒し』は、リラックスして安心できる環境を作る事?
本来の癒しが回復を指すなら、リラックスでき安心できる場が『癒し』なのだろう。明日への気力が充実し、疲労が一蹴されていく環境こそが『癒し』であるべきだ。
性的満足を『癒し』と言ったり、可愛いを『癒し』と言ってみたところで、気力の回復にはなりにくい。もちろん、気力の回復につながる人もいるだろうが、多くの人が回復できる場が『癒し』と言える。