変化の多い現代、変わらないものは大切で豊かさにつながる
電車での移動中に中学時代の友人と会った。約三十数年ぶりだ。「お前は変わっていないな」と言われ、三十数年間進歩がないのか、と聞き返したが、そうではないらしい。
現代では、デジタル機器は一カ月もすれば旧タイプの機械となり、情報もリアルタイムに流れている。友人に言われたことは、「これだけ変化が多く、時の流れが早くなった現代で、変わらないでいられることは、豊かさの象徴かもしれない」だった。日々あまり意識をしていなかった事だけに、意外な気分だった。
そこで早速、5年の付き合いとなる彼女に、私の『変わらないところ』を聞いてみた。意外にも次から次へと挙げてくる。好きな食べ物、好きな事、趣味も二十年以上変わっていない。
彼女の趣味も学生時代から変わっていない。変わらない趣味なので、二人とも趣味を語り出せば長く熱い語りになる。他人から見れば豊かで満ち足りているように見えるのかもしれない。
多趣味より一つの趣味を極める
「器用貧乏」という言葉がある。
器用に色々な趣味を転々とこなせる事は非常に羨ましい事だが、趣味に対する造詣が広く浅くなってしまっているように見える。
例えば、彼女が趣味としているダンスで、経験がないのにダンスを見ただけで踊れてしまう人がいた。簡単に次々とコピー修得してしまい、別のスポーツに転向してしまった。
長年ダンスを趣味とする彼女から見ると、「せっかく踊れるのにもったいない」である。それぞれのダンスやステップには歴史や背景がある。そのステップが世界中のダンサーに愛される理由がある。それらを知り、その思いを胸に躍れば、感性や表現力が磨かれるからだ。
変わらない物を持っている人は豊かだ、と冒頭の友人は言ったが、変わらぬ物が豊かさを生むのだろう。『こよなく愛する』というが、何年も何十年も愛していれば、様々な事を知り、思い入れが深まり、長い歴史を共に歩むことになる。嗜好が変わらなければ、その人を表す代名詞にもなる。
Aさんって、どんな人?と思い馳せた時、「Aさんはダイバーで海を愛する人」と言われれば、Aさんのイメージは、日焼けしたスポーツマンで体格のがっしりとした人となるだろう。さらにAさんのダイビング経験を人づてに聞けばダイビングが本当に好きなことがわかる。そのダイビング経験の中にはビギナーをアシストする事もあっただろう。海中生物の生態に関する造詣も深いだろう。
変わらぬ物は、その人のイメージを形づくる代名詞になってくる。それが豊かな人間を作っている。多趣味より1つの趣味を極めている人の方が人間味豊かと言われるのはそのためだ。
現代はスピードの時代と言われている。日々変化していく社会に適応するために私達は多忙だ。一つの趣味を極める時間を作ることも難しい。そんな時代に、多くの趣味を極めるとなると時間創出は困難だ。コレが趣味、と言えるものを持っている人が余裕ある生き方に映る。何か一つで良いから趣味を極めたいものだ。