エレキベースが最高に輝く飛び道具「スラップ奏法」の習得法!
スラップ奏法とは?
ベースでの花形といえる奏法にスラップ奏法があります。スラップは弦を叩いたり引っ張ったりして、アタック感の強いパーカッショナブルな音を出す奏法です。この奏法は、日本では江川ほーじん氏がはじめにおこなった奏法と言われており、チョッパーと呼んでいたため、日本ではチョッパーという名で親しんでいる人も少なくはないです。
このスラップの生みの親と言われているのが、アメリカのラリー・グラハムという黒人のベーシストで、彼は音楽一家に生まれて家族バンドでベースを弾いていましたが、ドラムが抜けてギターが抜けて…と、バンドの中でリズムもメロディーもになう人間がいなくなってしまったために、必要にかられて生み出した奏法といわれています。
とはいえ、グラハム氏が世界で初めて有名な場でスラップを披露したというだけで、彼がスラップの生みの親だという説には、それ以前からスラップをしていたというプレーヤーからの批判も殺到しました。このスラップという奏法は、誰がはじめというわけでもなく、生まれるべくして生まれた奏法なのです。
ファンクやフュージョン系を中心に使われる奏法
それからも、黒人系のブラックミュージックを中心として、ファンクやフュージョン系のミュージシャンによってスラップは多用されてきました。現代に入ってからは、レッドホットチリペッパーズのフリーこと、マイケル・バルザリー氏がロックシーンにおいて、独自に進化させたスラップを応用するなど、幅広いジャンルでスラップが利用されるようになりました。
ベーシストのソロをとる際の花形としてもスラップが利用されるようになったわけです。
きらびやかさと重さの両方を持っている
スラップ奏法の特質すべき点は、ベースの持つ音圧やボトムと、きらびやかでアタッキーなギターのカッティングのようなサウンドを併せ持っている点にあります。もちろん、バンドではドラムがいますしギターもいますから、スラップが本当に必要とされるジャンルはほとんどないのですが、それでもリズミカルでアタッキー、かつパーカッシブなサウンドは、誰から見ても目を引きます。
筆者もベーシストとしてそれなりに長く音楽活動をしていますが、ベースとしての本来の奏法よりも、このスラップをやったときの方が観客からの評価が高いです。
正直、ベーシストからしてみればスラップは誰でも当たり前にできる奏法で、しかもバンドにおいてはそれよりも大切な役割がたくさんあるのですが、やはり一般の人から見ればベースという低音域はなかなか聴き取りづらく、どんなに技術的なプレイをするよりも単純なスラップを繰り出した方が、圧倒的に評判がいいのです。
普段から見てくれているお客さんから、簡単なスラップをした時に限って「うまいですね!」とか「感動しました!」と言われると、逆に複雑な心境になりますが、それが消費者の心理なのかもしれません。
バンドでの使い道を理解する
とはいっても、スラップはそうそうバンドで必要な奏法ではありませんから、普段から何かにつけてスラップを演奏するのはバンドにとって、邪魔な存在以外の何物でもないでしょう。バンドでは様々なパートが集まって、一つの曲を演奏しています。ベースも(ギターも)所詮はその音の一部にしか過ぎないのです。
つまり、その楽器ごとに必要とされている仕事をしっかりと果たさないといけないわけで、ベースに求められているのはほとんどの場合スラップではありません。
(例えばですが、リードギターが自分だけ目立とうとしてめちゃめちゃなギターを弾いたとして、それで曲自体が良いものになるでしょうか?というのと同じ話です)
ベースにはベースの役割があり、それを常に考えながらバンド活動をするのが常識です。しかし、ベースでも目立ってはいけないというわけではありませんから、これらのことをしっかりと意識したうえで、必要に応じて自然にスラップを曲に馴染ませていくことができる技術をつけていけばいいだけです。
どういうリズムや、曲のどういう場面でスラップを演奏すれば、曲としても際立って、なおかつボーカルや他のパートを邪魔しないか、ということを考えていけばいいのです。
親指と人差し指のコンビネーション
スラップの奏法について、あらためて話を戻します。スラップは親指で低音弦側を叩くのと、人差し指や中指などで高音弦側を引っ張る奏法の組み合わせで成り立っています。基本パターンは、低音弦を押さえて親指で叩き、その音のオクターブ上の高音弦を人差し指などで引っ張るというのが基本です。
叩いて引っ張っての繰り返しになります。そして、左手のミュートや音の切り方も重要なポイントになってきますし、当然バンドで演奏するにはしっかりとしたリズムの基礎を持っていなければいけません。
パーカッションのようなスラップ奏法
基本的なスラップは、親指のサムピングと人差し指や中指のプラッキングでなりたっていますが、黒人系のプレーヤーなどでは、さらに薬指や小指も連動させて、ただ単にアタッキーなサウンドではなく、落ち着いたパーカッシブなサウンドを奏でるスラップ奏法もあります。
ギターでいうブリッジミュートをしながら、親指で低音弦をはじいて、すかさず人差し指やその他の指を連動させてパーカッションのようなサウンドを出すのです。海外ではヴィクター・ウッテン氏がこうした奏法の立役者で、ウッテン奏法などと呼ばれたりします。
スラップでも多様なジャンルや音が出せるのです。