名文ではなく、良文を書け!読みやすい文章の極意
ありとあらゆるビジネスシーンにおいて、文章を書く技量というものは常に求められます。文系か理系か、出身の畑は関係ありません。言い訳の利かないスキルです。
ただし、一般的なビジネスパーソンに、小説のような名文を書く技量は求められません。必要なのは、誰にでも伝わる、明快で読みやすい文章を書くことですから、コツさえつかめば誰にでも、分かりやすい文章が書けるようになります。
良い文章を書くコツは、おおよそ以下の通り。
1.何を書きたいのか、テーマを絞る
あえて、最初に難しいものを持ってきました。実際に文章を書いてみるとよく分かるのですが、あれこれとペンを走らせたり、あるいはキーボードを叩いているうちに、書きたいことが頭の中でどんどん膨らんできて、結局のところ相手に一番伝えなければならないことは何なのか、ピントがぼやけてしまう恐れがあります。
これを防ぐために有効なテクニックは、このポイントだけは文章中に絶対盛り込むと決めた項目を箇条書きにすることです。この際、箇条書きの数は多すぎても少なすぎてもダメ。だいたい三つくらいに絞ってポストイットに書き込み、パソコンのディスプレイの隅っこや下書きノートに貼り付けておけばいいのです。
いわば、ゴールや重要なポイントを決めてから文章を書き始める感覚。これを習慣にすれば、格段に文章が書きやすくなります。
2.過剰な主観を交えずに、伝えたい事実を簡潔に書く
当たり前ですが、ビジネス文書と小説の類は全く別物です。小説と違い、ビジネス文書においては読み手に感情移入させる必要がほとんどないので、あくまで客観的に、伝えるべき事実だけを簡潔にまとめるべきです。
文章中に、感情に任せたような過剰な装飾表現が増えると、まず間違いなく読みにくい資料が完成してしまうでしょう。ビジネスにおいて、相手の情に訴えかける必要が皆無なのかと問われれば、必ずしもそうとは言い切れないのが厳しいところなのですが、読み手のハートを鷲づかみにする文章の書き方は、また別の機会があれば。
3.句読点の付け方に注意
小学生じゃあるまいし、どうしてそんなことを口うるさく言われなければならないのか。そんなふうに訝る人こそ要注意。句読点とは本来、読みやすい文章を書くための必須アイテムですが、使い方を誤ると、とんでもない悪文を生み出してしまうもの。
数が多すぎてもダメ、少なすぎてもダメ。一文の中に、だいたい二つか三つくらいの読点を盛り込むことが最も理想的です。
また、以下の例をご覧になっていただければ分かる通り、読点を付ける場所によって、文意が変わってしまうという事態も起こりえるので、解釈のブレを無くすべく、くれぐれも注意してください。
★私の父は感慨深げに、祖父の霊前に花を添える母の背中を見つめる。
★私の父は、感慨深げに祖父の霊前に花を添える母の背中を見つめる。
感慨深いという感情を抱いているのは、私の父か、それとも母か。その違い。
4.「」の外側に句点を付けない
要するに、
「大丈夫ですよ。良い文章は誰にでも書けるようになりますから」。←これが問題。
矢印で示したように、カギカッコの外側に句点を付けることは禁物です。古典作品などを眺めていると、たまに見かけるのですが、現代の常識に照らし合わせて考えれば、やはり避けるべきでしょうね。
5.ビジネス文書を書く際には、株式会社という表現を省略することを避ける
具体的に、株式会社という言葉を文中で用いる際、正式に書かず(株)などという表現で省略する人がいますが、これは先方に対する失礼に当たるので、避けてください。
しかしながら、もしも先方がそのような文書を送ってきた場合、笑って許してあげましょう。
6.接続詞も含め、同じ言葉を過剰に繰り返さない
しばしば指摘されることですが、
頭痛が痛い。
馬から落馬する。
などの表現は「重複表現」といって、避けるべきタブーです。気を付けてください。
また、接続詞や副詞の用法で「が」や「の」などをしつこく使うことも、やはり控えましょう。やむを得ない場合はあるのですが、
「君がこれが必要があると言ったからわざわざ用意したんだ」
→「どうしてもこれが必要だと言うから、君のためにわざわざ用意したんだ」
一例として矢印のように言い換えると、すっきりした文章になりますね。
7.きれいな修飾の仕方
くれぐれも肝に銘じてほしいのは、修飾語は文書の主役ではないということ。美しい文章を書こうとやっきになりすぎて、大事なことが相手に伝わらなければ本末転倒です。修飾語句は、必要最低限の分量をシンプルに用いましょう。
修飾語は、被修飾語(修飾したい言葉)のすぐそばに添えるのが基本。あまりくどくならないように。
どうしても長い修飾語を添えたいのであれば、被修飾語の後ろではなく、前に配置すると文書が読みやすくなりますよ。
8.平易な表現を心がける
専門用語は、できるだけ使わないことがベスト。どうしても使いたければ、その言葉を知らない読み手にも文意が伝わるよう、卑近な例を挙げるなどして言葉の意味を解説しましょう。
9.いわゆる「ら抜き言葉」は文法的に誤り
くれぐれも注意してくださいね。ただし、小説などを執筆する際、会話文に「らしさ」を表現したければ、ら抜き言葉をあえて用いるのも技の一つとしてありです。いずれにせよ、ビジネスパーソンには無縁ですが。
10.一度書いた文章は、必ず読み返そう
いわゆる「推敲」ですよね。重要なポイントは、文書を書き上げてから推敲まで、少しだけ時間を空けること。その方が、誤字脱字などを発見しやすくなります。面倒でも、推敲は必ず実行してください。
もちろん私も、この文章を書き終えた後、きちんと推敲しましたよ。それでも誤字脱字などがあれば、ご愛嬌。