サラリーマンと個人事業主は、持つべき信念の種類が違う!~後編~
個人事業主の仕事の理念~私の実体験より~
個人事業主は自分の信念を貫く必要があります。目先の利益よりは長い目で会社のあり方、クライアントとの付き合い方についても自分の信念を貫き通す必要があります。企業の独自性は、あなたが作りあげるのですから。
お付き合いするクライアントを選ぶことも、自分の好きな仕事を選ぶことも自由にできます。但し、その他大勢ではなく、「特別な存在」にならなくてはなりません。
そのためには、とにかくクライアントとの人間関係を築き、誠実・信頼・仕事の正確さが命です。自分とクライアントの関係の築き方にも自分流に誠実に確実なルールを決めることができます。
個人事業主は、3年は収入なしの覚悟でやって行くほどの覚悟で始めなければなりません。バックが付いている場合は別ですが、何の信頼も実績も無いのですから、全てが0からの勝負です。信頼や実績を作りあげるのに、一般的に3年はかかるということです。それまで収入が不安定なのです。
私は主人の転勤で大阪にやって来るまで士業の個人事務所を営んでおりました。私の個人的感想ですが、人は見かけで判断します。信用も見かけで判断するのです。私の個人事務所開業までの経過を紹介しましょう。
実は、私は今の主人とは再婚で、初めの主人が亡くなった後、10年のブランクの後の就職のために資格を取得したのですが、ブランクのある人間でしかも地方では資格よりも実務だということで就職できず、困り果てておりました。
そんな時、士業の県の事務局でパートのお話を戴きました。事務局では資格を役立たせることはできませんが、パートをしていると士業間の人脈だけはできるから、運が良ければ就職先を紹介してもらえるというのです。喜んでそのお話をお受けし、時給900円で働くことになりました。
ビジネスマナーのなってない20代若者に事務局のルールを説明しただけで、「事務局の事務員なんかにそんなことを言われる覚えはない。私に命令できるのは支部長だけだ」なんてふざけたことを言う人もいました。
「たかが事務員」とか、「会費で給料もらってる身分で仕事位まともにやれんのか」等言いがかりをつけて、事務局が無料配布している手帳については、年末のクライアントのご挨拶のカレンダー代わりに使っているのですが、申し込みに遅れた人の言い訳が、ちゃんと申し込みをしたという言いがかりでした。
そのような方には全て証拠を示して申し込みが無かったことを提示して引き下がって頂きました。それでも「次回からは気を付けて下さいね。お忙しいので勘違いされていたのかもしれませんね。支部長に話してどうにか用意して頂けるようお願いしてみます」と会員様を窮地に落とすようなことはしませんでした。
「たかが高卒の事務員に理詰めで証拠を出されるとは夢にも思わなかった」と面と向かって言ってくる方も何回もあり、私は大学卒で資格も持っており、今は就職先を探しているところだと説明すると、その度にビックリされる次第です。
こういう極端な方々は少ないのですが、こういう方々は噂も広めてくれるのです。一旦味方に付けると強力です。初めの失礼千万な態度のお詫びかどうかわかりませんが、元秘書だから説明が丁寧だとか、わかりやすい、的確だ、段取りが良い等の評判をあっという間に広めてくれました。そのお陰で就職先も見つけて下さったくらいです。
そこで数年修業を積んで、所長が引退するということで、顧客ごと事務所を引き継ぐ形で個人事業主となったのです。これで、私も一国一城の主です。顧問契約30社という私1人の個人事務所としては十分大きな安定経営が見込まれます。おまけに困ったときは今までの事務局の人脈で電話一本で助けて頂けました。
今思えば「結婚も仕事もできない高卒の事務員」と勝手に誤解され、バカにされ傍若無人な屈辱に耐え、事務局を自分の思い通りに回せるようになるまで3年かかりました。
ここでの屈辱に負けて逃げ出さず、信頼に変えるには時間がかかりましたが、小さなことをコツコツ積み重ねることで幸運なことに凄い人脈を得ることができました。自分の仕事は必ず帰って来るということを実感しました。
顧問先の言いなりになるのではなく、私が顧問先を教育するシステムが私の主義です。「見かけはソフトでも仕事は厳しく、言いだしたらテコでも動かない」というのが私の評判だそうです。一方、「仕事は完璧だ」というのも定評です。
このように、他人に左右されることなく、自分の主義主張で仕事の選択ができるのは、個人事業主ならではです。それでも辛抱が幸運を運んで来るものだというのは、全ての生き方に通じる気がします。但し、個人事業主は、代表の人間性が事務所の信頼に繋がるので、恐さもあります。