キユーピーの従業員約12000人をやる気に変えたQCサークルの数倍効果的な企業活動とは
キユーピーといえば、日本人なら知らない人はいないほどのマヨネーズの大手です。
その経営理念は「Food for ages 0-100」
マヨネーズの他にも、離乳食やドレッシング、パスタソース、そしてグループ会社のアヲハタではジャムを手がけています。ファミレスやファーストフード店で数年前からよくみかけるようになった半熟卵もキユーピーの技術です。
キユーピーは、マヨネーズを中心に赤ちゃんから大人まで食べられる食品を展開しています。日本人から愛される製品を生み出し続ける秘密はその企業文化にありました。
「親を大切にすること」が社訓
キユーピーの社訓は3つあります
- 道義を重んずること
- 創意工夫に努めること
- 親を大切にすること
特に、社訓に「親を大切にすること」が含まれているのは日本企業の中でも珍しいことです。毎年お中元やお歳暮の時期になると、キユーピーの従業員はキユーピー製品の詰め合わせを親に送ることができます。
もちろん、費用は会社負担です。さらには、半年に一度6,000円のお小遣いが会社から親に送られます。
親を大切にすることで、感謝する気持ちが芽生え、その気持ちで得意先や株主など支えてくれる方々に接することができるようになる、という考えなのです。
「夢多゛採り活動」が新たな企業文化に発展
キユーピーは、2013年には売上高過去最高額約5,300億円を突破しました。その2013年のキユーピーCSRレポートにはこんな言葉が書かれています。
この「夢多゛採り(むだとり)活動」とは、従業員の自主性を高めた小集団活動のことです。小集団活動は、有名なものではトヨタの改善活動があります。組織を小さいグループに分け、日常業務の改善を行うのが主な目的です。
食品メーカーなど日本のものづくりはこのような改善活動に支えられてきました。
QCサークルはマンネリ化
キユーピーの「夢多゛採り(むだとり)活動」は、2003年に当時の仙川工場長の強い思いからスタートしました。
それまでも「QCサークル」と呼ばれる品質改善のための改善活動が続けられてきましたが、従業員による自主的なものではなく、会社側からのやらされ感がある活動でした。
次第にこの「QCサークル」はマンネリ化しはじめ、従業員の取り組みに対するモチベーションも低い状態が続きました。このままではいけない、そう強く思った当時の工場長が始めたのが「夢多゛採り(むだとり)活動」でした。
この「夢多゛採り活動」には「無駄」をとるという意味だけではなく、文字の通り「夢」を多くとるという意味を込めて名付けられました。「夢多゛採り活動」は、これまでの会社からのトップダウン的なやり方の改善活動ではなく、従業員の自主性を尊重するため現場主導の活動として立ち上げられました。
そのやり方は、会社側が目標を設定するのではなく、従業員一人一人が目標(夢)を設定し、それに向かって自主的に取り組むというものです。最初の2年間ほどはなかなか定着しませんでしたが、根気強く活動の推進を続けたことで、いまでは仙川工場のみならず、営業所から研究所、全国全ての施設に広がり、完全に定着しました。
その具体的な活動内容は工場の内部を徹底的に清掃する「ピカピカ活動」、職場で困っていることを部署の垣根を越えて話し合う「改善実践会」などです。
どの活動も、従業員自らが考案して、自ら集まって進めています。このような取り組みが文化として定着したことで、キユーピーは社員が自主的に仕事をする企業となり、過去最高の業績を達成することができたのです。
巨大な「企業文化体現」基地、仙川キユーポート
同じく2013年にキユーピーマヨネーズが初めて生まれたマヨネーズの聖地である仙川工場をリニューアルしました。巨大な6角形の形をした施設です。その内部は研究所と工場、本社施設、そして見学施設が一体になっています。
「仙川キユーポート」と名付けられたその施設はまさに、キユーピーの基地といってもいいでしょう。内部の一番の特徴は、施設を一周するとちょうど「3分」になることです。
この「3分」、なんのことだかわかりますか?そう、キユーピー「3分クッキング」でおなじみの「3分」のことです。
オフィスはフリーアドレスになっており、キユーピー本社の人だけでなく、工場、研究所、グループ会社など関係者が自由に使用できるようになっています。
託児所や授乳室も各階に備えられており、女性にも優しい施設となっています。
キユーピーには社訓とは別に、昔から受け継がれてきた社是があります。
それは「楽業偕悦(らくぎょうかいえつ)」。その意味は、志をともにする人が仕事を楽しみ、苦労をともにしながら喜びをともにするという意味です。
一般的な大企業は組織も縦割りで、オフィスで座る場所も別々です。キユーピーのような大企業で、同じ仲間として従業員を大切にするという精神が実際の業務から施設まで反映されているのは驚くべきことです。
人を大切にし、それを文化として練り上げ、そしてその企業文化を施設にまで体現する、この一貫性がキユーピーの強さなのではないでしょうか。
マヨネーズを食べる際に、ぜひこのキユーピーの物づくりにかける思いを感じてみてください。