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職務質問と所持品の検査、違法なものもあるってホント?

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2014.04.16

先日、職務質問とそれに伴う所持品検査についての事件につき、東京簡易裁判所のある判断がニュースで取り上げられていました。

問題になった事件とは、職務質問を受けた男性が所持品検査を拒もうと警察官に暴行をしたとして、公務執行妨害罪の現行犯として逮捕されたというものでした。この事件につき、東京簡易裁判所は無罪を申し渡したのです。

この事件は、職務質問の際に男性の承諾なく警察官が服の上から所持品を調べようと触ったというもので、この所持品検査自体が違法とされました。そして男性の行為は、違法な所持品検査を拒む態様としては許される程度のものであった、と判断されたのです。

ここで、ちょっとあれっと思いませんか?「職務質問とか、所持品検査とかって拒否してもいいの?」と。そこで今回は職務質問・所持品検査の法的な性質についてご紹介していきたいと思います。

犯罪の発生と職務質問・所持品検査

男性なら、かなりの方が職務質問の一回や二回を受けたことがあるのではないでしょうか。学生時代の夜分遅くに「こんばんは」と急に声をかけられたと思ったら警察官だった、なんて話を聞くこともありますよね。

この職務質問は警察官に認められた法律上の権利で、犯罪の発生を知る上で、またその発生を抑止するためにも非常に重要な職務だとされています。

確かに、麻薬を所持していたことが職務質問によってわかり、現行犯として逮捕されたなんていう事件もニュースなどでよく耳にしますね。

職務質問・所持品検査の法的性質

具体的には、職務質問については警察官職務執行法という法律に定められおり、その質問について答えを強要されることはないと定められています(同法2条参照)。

所持品検査については、明文で定めた条文はないものの、職務質問と密接に関係しており、必要性・有効性が認められる行為なので、警察官職務執行法2条を根拠とする職務質問に付随して行うことができる、と最高裁判所が判断しており、実務もその判断に従っているようです(最高裁昭和53年6月20日判決参照)。
 
このように職務質問・所持品検査がともに拠り所としている警察官職務執行法は、その行為が強制的なものではないことを示しています。

つまり、両行為が強制に至ってしまえば違法であって、許されないものなのだということが法律で示されているということになりますね。では強制とは言えない取り調べ、いわゆる任意の取り調べというのはどのようなものを言うのでしょうか。

任意とは、相手の意に任せるということですから、相手が拒否したらそれ以上の取り調べは一切意任意ではなく、強制されたものになる、とも思われますよね。

この見解に従えば、警察官が「あなたの名前と職業を教えてもらえますか?」「持っている物を調べさせてもらっていいですか?」と聞いたのに対し、相手が「嫌です」と言ったらもう職務質問も所持品検査もできなくなるのです。

一見それでいいような気もしますが、この見解を貫くと、いかにも罪を犯した、もしくはこれから犯しにいくような不審な行動をとっている人物に対しても職務質問・所持品検査ができなくなってしまうのです。これでは警察官がパトロールをしている意味もなくなってしまいそうですよね。

そこで最高裁判所は、職務質問の最中に警察官の隙を見て逃走した人に対し、職務質問を続けるために追いかけて、後ろからその人の腕に手をかけて止めることは、警察官の正当な職務行為で適法であると判断しました(最高裁昭和29年7月15日判決参照)。

また所持品検査については、必要性・緊急性・相当性が認められる限りにおいて、相手の承諾がなくても適法に所持品検査を行うことができると判断しました(最高裁昭和53年9月7日判決参照)。

つまり、相手が拒否したとしても一定の場合には合法的に職務質問や所持品検査を行うことができるとしたのです。犯罪の発見や抑制をするという警察の職務と、個人のプライバシー権とのバランスを取った結果、このような結論に落ち着いたと言えます。

そして実務はこの最高裁判所の見解に従って運用されていますから、「任意だから、途中で逃げてもいいはず」なんていうインターネット上の書き込みを真に受けてしまうと、痛い目に遭いかねませんので、ご注意下さい。

冒頭でご紹介した事件も、まだ東京簡易裁判所で違法という判断が出されたにとどまり、今後控訴・上告を経て裁判所の判断が覆る可能性も十分に残っています。

「あの事件と同じようなケースだから、警察官を殴ったり蹴ったりしても無罪になるはず」などと思いこんで、実行してしまっては大変です。

確かにいかなる場合でも職務質問・所持品検査に応じなくてはいけないわけではありませんが、おもしろ半分に煽ったり、暴力を振るったりすることがないようにしましょうね。

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