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「実は俺、犯人じゃありません」まれにある身代わり犯人の裁判とは?

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2014.02.11

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テレビドラマなどではしばしば見かける身代わり犯人の話。最後の最後になって「実はあいつをかばって……」なんて種明かしももはや定番かもしれませんね。

ドラマでは敏腕刑事の活躍により、警察にいる間に真相がわかって、めでたしめでたしと幕引きになりますが、もしわからずに裁判が始まってしまったらどうなるのでしょうか?

これ、実際に稀にあるお話なのです。そこで今回は裁判になってから犯人でないことが判明した場合に、どうなるのかについてご紹介していきましょう。

なぜ身代わり犯人が発生するのか

まずは犯罪発覚後、裁判までの流れを簡単に確認しておきましょう。ある人が罪を犯したことを疑うにたりる、相当な理由があると判断されると、警察などの捜査機関が逮捕します。逮捕後、身柄を拘束しておく必要があれば検察官の請求により勾留され、裁判官がその必要がないと判断すれば釈放されて、その後の裁判を待つことになります。

このように裁判までには警察・検察官・裁判官が関わり、誤認がないよう何度も氏名の確認が行われます。しかし交通事故を起こして、後日自首する形で別人がやってくるようなパターンでは、真犯人を匿おうとして出頭してきているのですから、チェックにかかることもなく、そのまま裁判へと向かってしまうのです。

特に交通事故は通常より簡易な、略式手続(刑訴法461条以下参照)で処理されることが多いのですが、これは書面による手続きですので、より別人であることの発覚が難しいようです。

身代わりが発覚したらどうなるのか

身代わり犯人であることが、わからないまま裁判になってしまったけれども、裁判のある時点で別人であることが発覚した場合、その別人を相手に裁判を続けるのが適切なのかというとちょっと怪しいですよね。しかし途中まで裁判が進んでしまっているのに、それをなかったことにするのもおかしい……。

「じゃあ、庇われていた相手を連れてくればいいじゃないか」とも思えますが、この裁判で罪を問われている人、つまり被告人は、訴状で被告人として記されている人とされていますので、裁判は庇った人に対して成立しちゃっているんです。そうすると庇われた人は被告人でもなんでもない、単なる事件の関係者に過ぎませんから、この訴訟中でその罪を裁くことはできません。

また、これまで犯人のふりをしてきた人についても、当初の罪自体はそもそも実行していないのだから無罪となるとしても、真犯人を匿ったことにつき犯人隠匿罪(刑法103条)という別の罪を問う必要が出てきます。このように審理の途中で、問うべき罪を変更することが適切と考えられる場合、検察官は訴因変更という手段を採って、最終的に求刑する罪を変更することができます(刑訴法312条参照)。例えば、当初は殺人未遂罪で起訴したところ途中で被害者が死亡してしまった際に殺人罪(刑法199条)に問うべき罪を変更したりするのですね。

しかしこの変更も自由にしてよいわけではなく、一定の制限の下で変更が許されるものです。この点、身代わり犯人の事件では、当初の犯罪と新しく問うべき犯人隠匿罪とは、まったく性質の違う罪ですから、裁判で調べるべき資料も全く別のものとなります。このような場合には訴因変更は認められませんので、これまでやってきた裁判のつづきで行う、というわけにもちょっといかなそうです。

では庇われてきた真犯人と庇ってきた別人については、どうやって処理していくことになるのでしょうか。

新しい訴訟の提起と再審制度

まず真犯人については、逮捕・勾留・裁判の流れに乗せる必要がありますので、警察などが逮捕に足りる証拠を捜査することから始まります。そして改めて裁判が提起され、その罪について裁判所の判断を仰ぐことになります。ちなみに、前の裁判で被告人となった人に対し、この真犯人が自分の身代わりとなるよう依頼していた場合には、別に犯人隠匿罪の教唆犯という罪もプラスされますので、当初より罪がかなり重くなるでしょう。

一方、身代わりを務めた人には無罪が言い渡され裁判が終わります。しかし犯人隠匿の罪は残っていますからそちらにつき改めて逮捕され、起訴されます。こちらは身代わりが判明した時点で、検察官などに証拠がたっぷり残っているでしょうから、スムーズに有罪と認定され、弁護人は「庇うだけの事情があった」という点で減刑をしてもらえるよう尽力することとなります。

仮に身代わりだったことが判決が確定した後でわかった場合には、身代わりを務めた人につき、裁判のやり直しをする再審が実施され、当初の判決を取り消し、改めて無罪を言い渡し、さらに犯人隠匿罪について問う別訴が提起されることになります。

このように裁判までいくとかなり面倒なことになります。税金も無駄に使われることになりますし、やはりドラマのように敏腕刑事の活躍で、逮捕前に身代わりがわかってしまうのが一番ですね。

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