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アイディアに困ったり仕事に行き詰ったのなら、美術館がおすすめ!

美術館という所はなかなか気軽に行ける場所ではないですよね?「時間が空いたから美術館に行こう」という人は少ないでしょう。その中でも西洋美術は、最も足の向かない分野ではありませんか?

「感性で見れば良い」と言う人がいますが、感性で西洋美術は語れません。なぜならヨーロッパの社会情勢に伴って西洋美術が成り立っていて、その文化を理解しなければならないからです。西洋美術は時代の背景を理解してこそ価値があり、作者のメッセージに気付く事で身近に感じられます。

ではそのメッセージを実際に読んでみましょう。

サンドロ・ボッティチェッリとレオナルド・ダ・ヴィンチ

14世紀までのヨーロッパの作品は、まるでキリスト教徒のために芸術があるようです。しかし15世紀になると芸術家達の作風はガラリと変わります。その作風の変化を、サンドロ・ボッティチェッリとレオナルド・ダ・ヴィンチの絵で解説しましょう。

サンドロ・ボッティチェッリは“ヴィーナス誕生”の作者と言えば、ピンとくるのではないでしょうか?これはギリシャ神話をもとに描かれています。しかしキリスト教は一神教だったはず、なのにギリシャ神話や女性の裸体が描かれているのはなぜでしょうか?その鍵を握るのは、“人文主義思想サークル”とその主催者であった“メディチ家”です。

メディチ家は3世紀以上にわたって、イタリアの実質的な支配者として君臨した銀行家であり政治家で、後にトスカーナ大公国の王となった一族でもあります。“人文主義思想サークル”はメディチ家の主催する、ギリシャ神話とキリスト教のコラボレーションを試みる哲学者や文学者の集いのことです。

この中にサンドロ・ボッティチェッリやレオナルド・ダ・ヴィンチ、彫刻家のミケランジェロもいたそうで“ヴィーナス誕生”もメディチ家の注文で描いた作品だと言われています。

ボッティチェッリが女性裸体やギリシャ神話を作品にしているのは、キリスト教徒を見下したかったのではないでしょう。「人として自由に絵を楽しむ事が大切」というメッセージを伝えたかったのではないでしょうか?

レオナルド・ダ・ヴィンチは「万能な人」と言われていました。彼はミラノ公国の軍事技師であり、画家でもあり天文学や解剖学まで学んでいたのです。そんな万能な人、レオナルド・ダ・ヴィンチの描く絵は、どの画家も書いた事のないようなものばかりでした。

例えば、1333年に描かれたシエナ派の画家シモーネ・マルティーニの描いた“受胎告知”のリメイクをレオナルド・ダ・ヴィンチが描いているのですが、大天使ガブリエルは人間のようで、翼も鳥の翼が描かれています。

彼は「見たもの以外は描かない」という徹底したリアリズムの追及で自分らしさを表現したのです。“最後の晩餐(ばんさん)”は有名な作品ですが、この作品には彼のきわめた遠近法が使われています。

このように、芸術家達はキリスト教一色だった美術界に、斬新で新しい色をつけていったのでした。

ヨハネス・フェルメールとジャン・フランソワ・ミレー

日本で、ヨハネス・フェルメールの知名度はかなり高いのではないでしょうか?“真珠の耳飾りの女”や“窓辺で手紙を読む女”などが彼の作品です。

彼はオランダの画家で、活躍していた時代は17世紀バロック、一般家庭の生活は絵画が家に飾れるほど豊かになっていました。なぜこんなにも豊かになったかと言いますと、東インド会社の交易による経済的な繁栄があったからです。この交易によって珍しい品々が集まり、その中に美術品もありました。

絵画はたちまち一般市民の中でブームになり、それに応えるように登場したのが美術商です。一般市民達は気軽に美術商から絵を買うようになりました。1980年代後半の日本のバブル絶頂期のような時代と解釈してください。

ヨハネス・フェルメールは、そんな一般市民のために創作活動を行う画家でした。“窓辺で手紙を読む女”で手紙を読んでいる女性は、上流階級の女性ではなく一般市民なのに字を読んでいます。これは識字という教養を、一般の市民でも身につけられるほど市民の生活が豊かになったという証でしょう。

一方、ジャン・フランソワ・ミレーが活躍していた時代は18世紀のフランス、特権階級の人々もいれば一日の生活すら危うい一般市民がいるような、社会的格差のある時代です。“レ・ミゼラブル”の時代と言えばピンと来る方もいるのではないでしょうか?

ジャン・フランソワ・ミレーの“落ち穂拾い”には、このような一般市民たちの憤りが感じられます。落ち穂拾いとは、土地の所有権を持たない農民に許された重労働でした。

このように、今の時代でも十分共感できるような時代の背景が、一つの作品から読み取れるのです。

いかがですが?このように、絵を読める知識があれば、西洋美術だってもっと身近になり楽しくなるはずです。どこで話してもはずかしくありませんし、海外に行っても通用する話題なので、ビジネスチャンスにもつながるでしょう。

何かアイディアに困ったり仕事に行き詰ったのなら、美術館がおススメです。絵には、作者達のメッセージが必ず存在します。時代の背景が分かっていれば、共感できる絵だってあるはずです。皆さんもぜひ、そんなメッセージを見つけに美術館に足を運んでみてください。

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