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野手選択って何?プロ野球関係者すら知らない野選の意味

野球関係者にさえ理解されていないフィルダース・チョイス

野球場に行ったことがある人なら、スコアボードに「H」「E」「Fc」というランプが並んでいるのを見たことがあるだろう。「H」はヒット、「E」はエラー、「Fc」はフィルダース・チョイスという記録を表す。

このうち、ヒットやエラーは誰でも知っているが、フィルダース・チョイスを理解している人は、コアな野球ファンでもほとんどいない。いや、日本の野球関係者でも、よほどルールに精通していない限り、知っている人がいないくらいだ。フィルダース・チョイスを日本語に訳すと野手選択、略して野選と呼ばれる。野選を説明せよ、と野球関係者に問えば、ほとんどの人がこう答えるだろう。

「例えば無死一塁で打者がバント、打球を捕ったサードが一塁に送球すればアウトにできるのに、間に合いもしないセカンドに送球してオールセーフになり、無死一、二塁となる。これが野選だろ」

ご名答である。これは野選、即ちフィルダース・チョイスに間違いはない。実際にこういうケースでは、スコアボードに「Fc」のランプが灯る。ちなみに、筆者は独立リーグの公式記録員を経験したことがあるが、その公式記録マニュアルには、こう書かれてあった。

「野手選択とは、フェアゴロを捕った野手が打者走者の代わりに先行走者をアウトにしようとして、一塁以外の塁に送球したが、アウトにできなかった場合のこと」

大間違いである。そんなことは公認野球規則のどこにも書いていない。一応はプロリーグである独立リーグで、フィルダース・チョイスの認識が全くできていないのだから、一般の野球ファンが野選の意味を知らないのも無理はない。

「え、どこが違うの?野球関係者の答えと、公式記録マニュアルに書いてあることは全く同じじゃん」

と、普通の人は思うだろう。その通り、野球関係者の答えと公式記録マニュアルは、全く同じことを書いている。だが、例としては野球関係者の答えでいいのだが、ルール説明となると公式記録マニュアルは全然違うのだ。

フィルダース・チョイスと自責点の絡み

もう一つ、例を出そう。自責点に関する問題である。自責点とは、投手の責任による失点のことだ。従ってエラー(投手自身のエラーも含む)や捕手のパスボールが絡んだ失点は自責点とならない。

「無死一塁で打者がバント、打球を捕ったサードがエラーして無死一、二塁。次の打者が3ランを放って3点が入った。この場合の自責点は何点か?」

このケースでは、失点は3点だが自責点は2点である。なぜなら、3点のうちの1点はエラーによる走者だから投手の責任とはならず、残りの2点が自責点となるわけだ。では、この場合はどうだろう。

「無死一塁で打者がバント、打球を捕ったサードが一塁に送球すればアウトにできるのに、間に合いもしないセカンドに送球してオールセーフになり、記録はフィルダース・チョイス(犠打野選)で無死一、二塁。次の打者が3ランを放って3点が入った。この場合の自責点は何点か?」

結論から言えば、このケースでの自責点は3点である。なぜ?とほとんどの人は思うだろう。サードのセカンドへの送球でヒットではなく野選と記録されたのだから、一塁に投げればアウトになったはず。つまり、明らかにサードのミスプレーだから自責点は2点じゃないの?と。

だがこれは、自責点は3点なのだ。なぜなら、サードのプレーはミスプレーではないからである。サードは、先行走者をアウトにしようとした、即ちチームに有利となるプレーを選択したに過ぎない。

フィルダース・チョイスの本当の意味

ここでもう一度、言葉の意味を考えて欲しい。フィルダース・チョイス(Fielder’s Choice)即ち「野手選択」だ。フィルダース・チョイス・ミス(Fielder’s Choice Miss)でもなければ「野手選択誤認」でもない。公認野球規則2.28(a)には、こう書かれている。

「野手選択とは、フェアゴロを捕った野手が打者走者の代わりに先行走者をアウトにしようとして、一塁以外の塁に送球すること」

上記の独立リーグ公式記録マニュアルと比べてみて欲しい。公認野球規則には「アウトにできなかったこと」とは書いていない。要するに、アウトにできなかったかどうかは、野選とは全く関係がないのだ。

簡単に言えば、無死一塁で打者がバント、打球を捕ったサードがセカンドへ送球してアウト、打者走者が一塁に生きた場合、これでも立派なフィルダース・チョイス、即ち野手選択だ。ところが、日本の球場ではこういう場合「Fc」のランプは灯らない。なぜそうなったのかは謎である。

他にも野手選択の定義があるが、フィルダース・チョイスの項(2.28)は、2013年度版公認野球規則で僅か9行である。野手選択の意味を知ると野球ルールの本質が見えてくるのだから、覚えておいて損はない。

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