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社会人野球におけるクラブチーム。あるクラブの挑戦!

社会人野球には企業チームとクラブチームの2種類がある

日本の野球界にはプロ野球(NPB)、独立リーグ、大学野球、高校野球の他に社会人野球がある。プロ野球選手には社会人野球出身者も多く存在し、そのレベルは高い。社会人野球の選手達は夏の都市対抗野球(東京ドーム)、秋の日本選手権(京セラドーム大阪)を目指して戦っている。

その多くが会社の野球部、いわゆる企業チームだが、それ以外にはクラブチームというものがある。タレントの萩本欽一が茨城ゴールデンゴールズというクラブチームを創って話題になったが、これは特殊な例で、多くのクラブチームは資金不足に悩んでいる。レベル的にも企業チームに遠く及ばず、都市対抗や日本選手権でクラブチームが優勝するのはかなり難しい。

クラブチームの現状

では、クラブチームはどんな運営をしているのか?奈良県にある「一城クラブ」というチームでマネージャーをしている松井芳高さんに話を訊いた。松井さんは30代のサラリーマンで既に結婚しており、仕事とマネージャー業の両立は大変だという。スケジュール管理や予算チェック、練習場確保、対戦相手探し、スカウティングなど、やることはたくさんある。

ではなぜマネージャーを引き受けたのか?実は弟さんが同クラブでプレーしており、応援に行ったりしているうちに選手達とも仲良くなって、何かサポートしたいと考えてマネージャーに就任したそうだ。

一城クラブが発足したのは1998年。大阪にある強豪高校の野球部OBが、卒業後も硬式野球を続けたいと思い、チームが結成された。一城クラブはかつて、ある会社から支援を受けていたそうだが、現在はそれもなくなって完全な自主運営となっている。選手個人が納める部費は1年間で36,000円。チームの収入は部費のみなので、ギリギリの運営を強いられるのが現状だ。

選手はサラリーマンが最も多いが、他にも公務員や教員、肉体労働者もおり、中には大学生や高校生もいる。職業がバラバラなので平日には練習はできず、全体練習は土日祝のみ。

サラリーマンならまだいいが、職種によっては土日祝でも参加できない選手もいる。企業チームなら練習や試合が優先され、しかも給料や身分は保証されているが、クラブチームにとっては大きなハンディだ。

また、専用グラウンドを持っていないので、練習場を確保するのも大変だ。何しろ奈良県には硬式野球ができるグラウンドが少なく、各チームほとんど取り合いだという。

やむなく他県のグラウンドも物色するが、交通の便が良い大阪ならまだいい。場合によっては遥か遠くで交通不便な京都府北部や和歌山県最南端(要するに本州最南端)まで、何時間もかけて出かける。たとえグラウンドが確保できても、1日中練習できるとは限らず、午前中あるいは午後のみということが多い。

野球好きが集まったチーム

最近ではクラブチームでも企業が強力にバックアップするチームも増えてきた。そんなチームは当然強く、都市対抗や日本選手権に出場するクラブもある。一城クラブと同じ奈良県にある大和高田クラブも企業支援を受けたクラブチームで、都市対抗や日本選手権にも出場し、2009年の日本選手権ではベスト8に進出した。一城クラブが大和高田クラブに勝つのはなかなか難しいようだ。

一城クラブは高校や大学、企業で完全燃焼できなかった選手が、草野球ではなくまだまだ本気で野球をしたいと思って集まったチームだ。中にはプロ野球(NPB)を目指している選手もいるという。

もちろん、クラブチームの選手がNPBのドラフトにかかるのは難しいので、一城クラブで腕を磨いて独立リーグでプレーしたいと考えているようだ。独立リーグからステップアップしてNPBへ、というわけである。

「ウチは本当に野球が好きな連中が集まったチーム。地域密着や社会貢献なんて崇高な理念はありませんよ」と松井さんは言う。これこそが本音なのだろう。「野球が好き」それ以外に野球をやる理由などない。

一城クラブにとっての“本場所”は春に行われる奈良県一次予選だ。ここで勝ち抜けばクラブ選手権出場はもちろん、都市対抗出場の道も拓ける。都市対抗はさすがに難しいだろうが、今のところ一城クラブの目標はクラブ選手権出場だ。

社会人野球も不況により企業チームが激減している。つまり受け皿が少なくなったので「野球難民」が増えているのが現状だ。それだけに、クラブチームの存在意義がこれからますます強まるのではないか。一城クラブは残念ながら今季は予選敗退したが、これからの活躍に期待しよう。いつかは都市対抗や日本選手権に出場する日を夢見て……。

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