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より奥深く野球を楽しめる!慣れれば簡単なスコアブックの付け方

日本の球場から消えた「スコアおじさん」

野球映画の名作と言われる「フィールド・オブ・ドリームス」で、こんなシーンがあった。ケビン・コスナー演じる主人公が、球場でスコアブックを付けながら試合を見ている。そんなシーンが挿入されるのは、ファンがスコアブックを付けながら野球を見る行為が、アメリカでは一般的な光景だからだろう。

ところが、日本の球場ではスコアブックを付けながら観戦している人をほとんど見たことがない。いや、昔は大勢いた。筆者が子供の頃は、球場では写真なしの安い選手名鑑が売っていて、その裏側にはスコアシートが描かれていた。当時のおじさん達は選手名鑑の裏側にせっせとスコアを付けていたのである。

それがいつの間にか「スコアおじさん」は球場から消えてしまった。今ではみんなスコアブックの代わりにメガホンを持っている。それはそれでいいのだが、日本ではスコアブックを付ける文化が廃れてしまったのだろうか。

スコアブックは5分で試合の全てがわかるVTR

ところで、サッカー場でもスコアブックを付けているファンを見たことがない。一応サッカーにもスコアブックはあるのだが、その内容を見ると、ゴール前の絵がいくつかあって、得点した時にどんなパスを受けてゴールしたかを書き込むだけ。

つまり、0-0の場合は何も書けないわけだ。これでは中盤のパス回しやディフェンスなどは全くわからない。試合を丸々ビデオで録画した方がいいだろう。

それに比べると野球のスコアブックは、1球1球全ての動きが書き込める。こんなスポーツは、野球を置いて他にはないだろう。何しろ先攻用と後攻用のたった2枚の紙で、試合の全てが再現できるのである。

3時間かかったゲームでもスコアブックを読めば、ものの5分でどんな試合だったか手に取るようにわかる。スコアブックは3時間を5分に圧縮したVTRなのだ。こんな「野球の特権」を利用しない手はない。

スコアブックにも種類が色々

筆者の手許にはボストン・レッドソックスのパンフレットがあって、中にはスコアシートが描かれている。その説明書きを読むと日本のスコアブックとは全く違う。アメリカのスコアブックは実に単純だ。日本のスコアブックは走者の動きや守備記録など、事細かに付けることができる。本場アメリカを離れて、独自の進化を遂げたと言っていい。

ところが、その日本のスコアブックも、大きく分けて2種類ある。早稲田式および慶応式と呼ばれる記入法だ。早稲田式は一般式とも言われ、市販されているスコアブックのほとんどが早稲田式だ。

一方の慶応式はプロ野球(NPB)の公式記録で採用されているため、プロ野球式とも呼ばれる。筆者は独立リーグの公式記録員を務めたことがあるが、そのリーグでは早稲田式だった。初めてスコアを付けるのなら、わかりやすい早稲田式がいいだろう。

それでは、早稲田式のスコアブックはどんなものか、実際に見てみよう。

ジャガーズ1回裏の攻撃
一番・佐藤が3-2から7球目をサードゴロエラーで出塁
二番・鈴木(左打)の2球目に佐藤が盗塁、1-1から投前犠牲バント(セカンドが一塁カバー)で一死三塁
三番・高橋が2-1からセンター前ヒットで佐藤が生還し打点1(自責点なし)
四番・田中は初球を左越え2ランで打点2(自責点2)
五番・伊藤(左打)は3-1から四球
六番・山本は0-2から4球目を左中間二塁打で一死二、三塁
七番・渡辺は1-1からライト犠牲フライで伊藤が生還し打点1(自責点なし)
八番・中村は1-2からの5球目を見送り三振でチェンジ、山本が残塁でこの回4点

2回裏、相手投手が加藤に交代
九番・小林は0-1からピッチャーゴロ
一番・佐藤は1-1から死球で出塁
二番・鈴木は1-2から4球目をショートゴロで6-4-3のダブルプレー、無得点でチェンジ

3回裏
三番・高橋は2-1からセカンドゴロ
四番・田中は2-0からサードライナー
五番・伊藤は0-2からの3球目を空振り三振、三者凡退で無得点

文章で書くとこれだけ長い試合経過が、スコアブックではたった3列のマスで事足りてしまうのである。

さあ、さっそくスコアブックを付けてみよう!

上記説明だけではわかりにくいだろうが、市販のスコアブックには説明書きがあるので心配はない。最初は難しいと思っても、慣れれば簡単だ。また、難解なプレーが起これば注釈を付けて、備考欄に書き込めばよい。わからない記入法は後で調べるか、誰かに訊けばいいのだ。要は慣れることが一番である。

スコアブックを付ければ、その試合の記念になるし、試合の分析にもなるし、野球の見方が広がってくる。もしノーヒットノーランや完全試合などに遭遇すれば、何よりの宝物となるだろう。

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