BARで一流の男を演じるならシングルモルトを知っておこう
カウンターバーで静かにグラスを傾けている紳士。時折、マスターや常連客と談笑している。騒がしい訳でなくムードと時間を楽しんでいる。男としてのゆとりが感じられる。一流の男とは、そんな男だろうか?
よく行くBARで常連たちに、BARの達人ともいえる一流の男を挙げてもらった。何人か候補が挙がる中でH氏とT氏の名前が挙がった。BARに通い始め数カ月経ったが、なかなか席をご一緒することがなかった。
先日ようやく両人と席が一緒になった。二人とも会社帰りのようで、濃茶系の背広を身に付けた落ち着いた40代のサラリーマン風だ。それぞれ大手会社の課長、部長という立場で、別会社ながらBARで知り合ったらしい。つまりBARを通じて友人となった『飲み友達』だ。
本当の洋酒好きはシングルモルトを好む
さっそく同席させていただき御近づきの印にと、お奨めカクテルを挙げてもらおうとした。
帰ってきた言葉は「カクテルですか?ストレートでは駄目ですか?」だった。続けて「ストレートで飲むならシングルモルトですよ」と言われた。ストレートなら自分で買って飲めば良いと思っていたら、どうも趣が違うようだ。
彼らの話を要約すると、自分で買えば高い酒を何本も買うことになるが、BARでは幾つもの種類の酒を飲める、好みを言っておけば、マスターが用意し取っておいてくれる、飲み方のアイデアもマスターが提案してくれる、ということだ。
そんなシングルモルトウイスキーに味の大差はないだろう、と言ったら、大反論された。普通にウイスキーとして口にするのはブレンド・ウイスキーで、幾つものシングルモルトを飲みやすくブレンドしている。
ブレンド前の暴れ馬のような素材がシングルモルトだ。産地によって6つに大別されるらしい。味や香りは個人差があるだろうが、話をまとめると六地方のウイスキーは、次のようになる。
① ハイランド・・・一番スタンダード
② スペイサイド・・・華やかで甘い
③ ローランド・・・口当たりが良い
④ アイラ・・・香り良く素朴な味
⑤ キャンベルタウン・・・薫り高く少し塩味が増した味
⑥ アイランズ・・・ハイランドを飲みやすくした味
二人の独断なので異論をお持ちの方もいらっしゃるだろうが、ひとつの目安になる。一番良いのは、自分の好みをマスターに相談することだ。同じエリアでも異なる味や香りのウイスキーもあるからだ。
シングルモルトウイスキーは、個性が強く伝統がある。200年以上の歴史は当たり前で、300年以上の歴史を持っている蒸留所もある。マスターに相談するついでに歴史も聞いておこう。
自分の好みのウイスキー銘柄が決まれば、それを基準に飲み比べていくと良い。味や香りの感じ方は個人差があるので、自分にとって最高のウイスキーに出会えるはずだ。
ウイスキーを味わうには、味だけでなく香りも楽しもう。香りを楽しむために冷やさない方が良いようだ。オン・ザ・ロックとして氷を浮かべると芳醇な香りも殺されてしまうからだ。
因みに二人の紳士が挙げたウイスキーは『アードベック10年』『マッカラン12年』『グレンモーレンジィ』の3本だった。