決定的な証拠が使えない?!刑事裁判の難しいところ
警察も人権侵害はモチロン駄目!
基本的に、犯罪の捜査を行うのは警察です。ですから、被告人が有罪であることを決定的にするような証拠を手に入れるのも警察であることが多いと考えられます。しかし、そんな警察の中には、気が急いて無理な捜査をしてしまう人もいたりします。
たとえば、一時期問題となった「踏み字」などというものもそれに含まれますでしょうか。親しい間柄の人の名前を書いて、それを無理やり踏ませるなどというのは、人間の感情に不快感ないしは深い傷を負わせることは明らかです。
警察の捜査においては、そのような人権侵害的なものは、許されるべきではないでしょう。どんなに「こいつが犯人だろう」と思っていても、あんまりにもひどいことをしては、捜査されるほうにとっては取り返しのつかない傷にもなりかねません。
警察も国の機関ですから、警察がそういうことをすると「国が一般人を傷つけた」ということになります。皆が秩序ある中で暮らすために作られている国をいう組織が人を傷つけてしまっては元も子もありません。
違法収集証拠排除法則
そういった無謀とも言える、ひどい捜査を予防するための仕組みが違法収集証拠排除法則というものです。
刑事裁判の方法を定めている刑事訴訟法には、違法収集証拠排除法則という言葉は出てきません。しかし、なんらかの方法で警察の暴走を防ぐ必要があることは間違いありません。ですから、裁判所は、裁判例によってそのためのルールを作り上げたのです。
これは、証拠を集める方法があまりにもひどい場合には、その方法で集めた証拠が裁判で使えない(※注:「証拠能力が否定される」という言い方が正しいのですが、ここでは簡単に「使えない」と言っておきます。)というルールです。
たとえば、警察官が、令状もないのに犯人と疑われる人を警棒で何度も殴打して身動きが取れなくなったところを、所持品を漁って盗品を見つけ出したとしたら、それを窃盗の証拠として使うことはできません。
なぜなら、証拠の集め方が違法だからです。捜索令状も出ていないのに、人の所持品を、同意なく漁ることは、いかに警察といえども許されません。もちろん、あまりにも怪しい人間に対しては、同意を得ないまま調べることができる場合もあるのですが。
しかし、怪しい人間に対してであっても、相手が身動きをとれなくなるまで警棒で殴る必要はありません。他の警官に取り押さえて貰うだけでも十分なはずです。そこまで暴力的な警察官は現代には中々いませんが、将来出現しないとも限りません。
このような暴力は違法であることは明らかです。そんな方法を使って集めた証拠でも、裁判で使えるとすると、暴力でなんとかする方が色々と捜査も手っ取り早いと考えてしまう警官も現れるかもしれません。
ですから、そのような警官が現れることを防ぐために、違法収集証拠排除法則、などというルールを作っておく必要があったわけです。できるならば、そんな証拠の集め方をする警官が今後も現れないことを願いたいものですね。