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読みにくいほど記憶に残りやすい?書類に使うフォントと記憶の不思議

ビジネス書類を作るときには基本的には明朝体またはゴシック体のフォントを使うことがほとんどです。例えばWindowsパソコンでWordやExcel、PowerPointで何かを作る場合には「MS明朝(MS P 明朝)」や「MSゴシック(MS P ゴシック)」を日常的に使うでしょう。

明朝体やゴシック体は日本語の文章が読みやすいようにデザインされたフォントです。堅苦しいイメージはありますが、その分信頼性が高まるとも言えます。ビジネス書類での多用は当然のことでしょう。これらのフォントは新聞や書籍でも日常的に使われます。

デザインフォントは読みにくい

パソコンにインストールされたフォントにはゴシック系と明朝系以外にも、ポップだとか丸文字みたいな名前のついたものが多くあるかと思います。チラシのようなデザインをしたいとき、余り堅苦しくない文章にしたいときに使用するものです。

これらのフォントは確かにデザイン性に優れていますが、文章として並べたときに読みにくくなってしまいます。商品名のロゴだとか擬音のような数文字以内の単語で使うのが本来の意図です。文章用の明朝体やゴシック体のフォントと区別して「デザインフォント」とも呼びます。

読みにくいフォントに関するこんな実験

ところが、2010年にフォントと記憶に関係する興味深い実験結果が発表されました。アメリカにあるプリンストン大学の心理学者・オッペンハイマー博士は、28人の被験者に90秒間である文章を読んでもらい、15分後にその文章の内容をテストするという実験を行いました。

このときグループを2つに分けました。一方には読みやすいフォント(16ポイントの濃いArialフォント)で文章を提供し、もう一方には読みにくいフォント(12ポイントの薄いComic Sans MSまたはBodoni MT)で文章を提供しました。

興味深いテスト結果が!?

テストの結果は読みやすいフォントで文章を読んだグループが正答率72.8%、読みにくいフォントで文章を読んだグループが正答率86.5%と、「読みにくい」方が正答率が高くなったのです。

オッペンハイマー博士はこの実験結果を受け、とある高校でさらなる検証実験を行いました。222人の高校生に対し、科目も含めランダムに「読みやすいフォント(通常の教科書のフォント)」と「読みにくいフォント」で書かれた教材を配布し、定期テストの結果を比較しました。するとやはり読みにくいフォントの教材を使った方が成績が良かったのです。

読みにくいとより集中できる?

このオッペンハイマー博士の実験結果はどう解釈できるでしょうか。フォントが読みやすい文章は確かにスラスラ読めます。しかしその分内容そのものに集中できず、気付かないうちに読み飛ばしていることが多くなります。逆にフォントが読みにくいと集中して読む必要が生じ、その分内容が頭に入ってきやすいのです。

博士は教育機関は教材のフォントを工夫するというだけで、追加の費用をかけなくても平均学力の向上が可能であることを指摘しています。しかし同時に、この結果はあまりに読みにくい(読めない)フォントを使ったり、そもそも個人の資質として「読みにくい文章は読むのをすぐに諦めてしまう」性格の人には効果が期待できないことも指摘されています。

私たちにも応用可能です!

この結果は教育関係者でない方々にも重要な結果です。自分が資格試験の勉強資料を作るとき、さらに業務でも必ず注意して読んで欲しい社内文書を作るときには、わざと読みにくいフォントを使うと集中力を高めることができるということです。覚えておくとどこかで使える心理テクニックではないでしょうか。

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