進化論やミトコンドリア・イブが何故先進国アメリカで否定されるのか?その二
誰が何の為に進化論を否定しているのか?
上の調査の結果から、進化論を否定しているのは「神」という事になる。実際は宗教を信じる人たちであるが、世界一の先進国でさえ、科学よりも神が優先されているのは驚くべき事である。
しかしキリスト教全体で否定しているわけではなく、聖書無誤説を唱える福音主義派がその中心であり、彼らの強硬な反対があり、進化論は公的機関での教育も行っていない州が多くある。
25%と言う数字は、決して小さくなく古い世代は50%以上に支持されていることを考えると、国の事情を変えるのに十分な数の人たちとなりうる。実際に裁判も多数行われており、法律で禁止されているとこもあるようだ。
そうなると、たとえ問題のない学校でも、PTAまたは地区の宗教団体の一部のクレームを恐れて進化論を教えない状況も生まれているようだ。これは日本の行き過ぎた人権保護者たちのクレームと同じような状況がアメリカでも起きているということだ。
意外と進歩の無い人というもの
この話で思い出すのは、有名な天動説提唱者達である。コペルニクスにせよ、ガリレイにせよ同じような理由で迫害を受けている。
つまり 何百年経ち人が宇宙に出かける時代を目の前にしても、頭の中では地球は平らであるという教会側のイデオロギーから抜け出せない人々が多くいるということだ。それも自由の国アメリカにおいてだ。
これは我々日本人の感覚からすると、非常に驚くべき事実ではないだろうか?もちろん現在地球は丸くないと言う人はいないだろうが、天動説と地動説の一番大きな違いは、自分を中心にしているか?していないか?である。
この場合の自分とは、人類、はっきり言えばキリスト教である。この進化論もまったく同じ教会側の心理が見て取れる。
人類の母 ミトコンドリア・イブを否定する人々
進化論と同じように、ミトコンドリア・イブを否定する人たちも沢山いる。もちろんこれは学説なので、100%というわけではないので他に有力な説が出てこれば入れ替わりがある。
そうした塗り替えによって、科学や人類は進歩してきたともいえるが、今回の否定する人々は科学的とは全く関係ない、宗教関係の人たちである。
つまり、神様が創った世界と主張するわけだが、ミトコンドリア・イブはアフリカである。そして特定方法は、DNAの突然変異の考えを基板としている。
神様が創った世界に突然変異は存在しない。元々我々の形を創られたことになっている。そしてもう一つ重要な事があるのではないかと思う。
社会の裏で生き続ける人種の壁
ミトコンドリア・イブは当然、黒人種である。この説では、人類は元々黒人種で、黒人種から遺伝子の突然変異により、黄色人種が誕生し、その後白人種が誕生、アフリカ→アジア(中近東含む)→白人となる。
この説では、人類はアフリカから始まって、その後の移動で中近東やアジア、欧州などに広がったとされている。つまり 欧米などの白人種は、黒人種の子孫であるという必然的な序列が出来ている。
逆に現在欧米で勢力のあるキリスト教と言うものは、白人種を中心とした宗教である。その出自がそうでなくとも、全ての神は白人のイメージで作られている。
そしてこれは突然変異で有名な、ホワイトアフリカンといわれる人々がいるのを思い出す。この人たちは、いわゆる遺伝子の突然変異で色素が薄いまたは無い状態(アルピナ)で生まれてくる為に白い肌の黒人となる。人ではないが大分前に一世を風靡した、ウーパールーパーなどもアルピナ種である。
この白い肌の黒人は、一部では「悪魔の子」とも言われ忌み嫌われるようだが、白人が行った奴隷貿易もまさに人を人と思わない悪魔の行為であったことは、偶然とは言え「白い」と言う事に対してイメージが重なる部分がある。
表面とは違い消えない差別意識
もちろん全ての人ではないが、上のアメリカの例でもわかるように実際に人の心はそれほど進歩もしていないし、自由でもない。私達の知るキリスト教の歴史は、欧米人そのものである。
それはある意味、白人優位主義の象徴でもある。日本人には、ほとんど想像不可能な領域であるが、人種による偏見はどこの世界にも色濃く残っている。おそらく日本は、人種差別が少ない稀な国の一つであると思う。
そして、古い話ではあるが、白人社会が何百年も続けてきた奴隷貿易や制度、植民地支配、これらは、白人優位主義の産物である。奴隷においては、既に同じ人間にさえ分類されていない。
確かに昔のことだ。しかし、この前提を全て変えると言う事は、欧米の実際に教えられ、信じられている自分たちの歴史や倫理観、美しい祖先の偉業を否定するに等しい行為であり、自分たちの正当性の否定である。少なくともある程度の割合は、そう感じると想像される。
また 歴史に留まらずにこの差別意識は、多くの人々の心の中に脈々と受け継がれているのは、現代の世界をみると残念ながら明らかである。そう言った、精神的主柱や自らのアイデンティティーを否定するのに強く反発するのは、人間の心の防衛上当然のことだ。
それが、ダーウィンの進化論を全面的に否定する「神への冒涜」であり「悪魔の理論」である。上に挙げた天動説を唱えた、彼らの状況とほぼ一致する。そして彼らは、この説のため罪人となっている。