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親が借金まみれで亡くなった。借金を引き継がないためには?

親などの近親者が亡くなると、葬儀以外にも大変なことがあります。そうです、相続問題です。

相続と聞くと、「うちの親はぜんぜん財産なんて持っていなかったし、関係ないよ」なんて思う方もいらっしゃるかもしれませんね。確かに相続が問題になるのはリッチな家のようなイメージがありますよね。

しかし、実は亡くなった人が資産家でない場合こそ、早めに対処する必要があるのです。特に借金がある場合には、ぼぅっと過ごしてしまったことで亡くなった人の借金を背負う羽目にもなりかねません。

そこで今回は借金を背負わないために講じるべき手段についてご紹介しましょう。

そもそも相続の仕組みって?

相続とは、ある人が亡くなることによって、民法で定められた人たちがその人の財産や権利義務を引き継ぐことをいいます(民法882条参照)。

たとえば親が亡くなると、親の所有していた家や土地などを子供などが相続することになるわけです。しかしここで忘れてはいけないのが、相続するのが「権利」だけではなく「義務」でもあることです。

つまり借金などを返済する義務も、土地などと一緒に受け継いでしまうことになるのです。返済する金額が他に相続した財産より少額であれば問題になることは少ないでしょうが、逆の場合は大変です。

亡くなった後、何もしないでいると法律で定められた割合に従って、そのまま相続したこととなります。これを相続の単純承認と言います(民法920条参照)。

この単純承認をしたとなれば、「親がした借金だから自分は関係ない」というごく真っ当に思える主張は通らなくなり、あなたが借金の返済をすることになってしまうのです。

では、このような事態を避けるためにできる手段にはどんなものがあるのでしょうか。

借金を相続しないために採れる方法とは

単純承認、つまり亡くなった人の財産をそのまま相続することで、借金を背負うことになるのですから、単純承認とならないようにしなくてはなりません。

そこで採りうる手段として考えられるのが、相続の限定承認をすること(民法922条)と相続放棄をすること(民法938条)です。

前者は、相続により発生する責任の範囲を相続財産の範囲内に限るというもので、借金がある場合であっても、相続した財産の範囲内でしかその返済義務を負わないことになります。

たとえば300万円の価値がある土地を相続したときに、400万円の借金の返済を求められたとしても、あなたは相続した300万円分だけしか貸し主に支払う義務がないことになるのです。

後者の相続放棄は、亡くなった人の財産を相続することを放棄するというもので、相続人となる権利そのものを放棄するという手段です。相続人でなくなるのですから、当然借金の返済義務も発生しないことになります。

上記いずれかの手段を採ることで、亡くなった人に借金がある場合でも借金を負わずに済むことになります。ただし限定承認も相続放棄も、相続が開始したことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所にその旨を申し立てなければならなりません。 

この「相続が開始したことを知ってから」というのは亡くなったことを知った日から、という意味です。法律に詳しくなく、後日自分が法律上は相続人であることを知ったとしても「知った日」は、亡くなったことを知った日とされます。

日本国民である以上施行された法律はすべて知っていたものと見なされるとされているのですね。ちょっと厳しいような気がしますが、そう決まってしまっていますので、ご注意を。

この3ヶ月を過ぎてしまうと、相続の形態は自動的に単純承認とされてしまいます(例外的に期限の延長が認められることもあります)。また、手続きをする前に相続した財産を売ったり、使ったりしてしまえば、その時点で単純承認をしたことになってしまいます(民法921条参照)。

家庭裁判所への申し立てには、亡くなった人の戸籍やあなたとの関係がわかる戸籍など、様々な書類が必要です。

特に限定承認をする場合には相続財産についての調査なども必要になり、申し立てができるまでに時間がかかりますので、期限を過ぎないよう、亡くなった後できるだけ早く手続きに着手することをおすすめします。

「それなら、亡くなる前に放棄しておけばいいじゃん」と思う方もいるかもしれませんが、亡くなる前の相続放棄は法律上認められていません。重大な権利なので、事前には放棄できないこととなっているのです。

また、一度限定承認・相続放棄の申し立てが裁判所に受理された場合には、以降取り消すことはできません。仮に相続財産に借金がなく莫大な資産があった場合でも同様ですので、申し立てる際には十分に考慮をする必要があります。

以上、借金を相続しないために講じるべき手段についてのご紹介でした。有事の際に慌てないよう、今からしっかり確認しておきましょう!