浮気や不倫の心理。良し悪しではなく男として「メカニズム」を理解する
実のところ、1頭のオスに群がるメスの3分の2は他のオスの子供を産むらしい。これは種としての多様性を守るという本能から。つまり、そのオスは利用されている可能性がある。元からして群れをなす生き物であり、どうせ群れるなら「強い男」を中心にしたほうが安心だろうし、上手くすれば優秀な遺伝子を残すこともできるかも、という打算的な動機があるのかもしれない。
それでオスが拒絶しないのも「オスの本能」かもしれないが、そのオスは自慢のハーレムをつくるのに苦労もしている。他のオスと戦って「勝ち得た」戦利品でもある。血も流している。だから頑張って3分の1を妊娠させるくらいはする。せっかくだし。
ところで、人間の男も「モテる」のとそうでもないのがいる。私はともかく、通常の男ならば「どっちがいい?」と問われたら答えに迷いはない。そのために努力している、という健気な男もたくさんいる。ある意味、オットセイと同じく戦っているわけだ。
また、その条件とは、ひと昔前みたいに「金と地位」だけでもなく、最近は清潔感やお洒落だけでも足らない場合もあるらしく、20歳になる我が倅が母親と洗面台の前を取り合うが如く、無精髭の処理は無論ながら、眉毛を抜くとか、洗顔クリームで「お肌のお手入れ」をする必要も出てきた。大和男児とは思えぬ所業であるが、いやはや、大変ではある。
しかしながら、その目的が「ハーレム」ならば、納得できる伴侶を得てからも「(その類の)努力」を止めない。「ハーレム」と呼ぶからには、メスはたくさんいても困らないからだ。
だから「ハーレム」に興味がない、半ば引退したようなオスは「努力」のモチベーションが下がる。活力が希薄になり仕事もぱっとしない、とか言われる。本来は誤った使い方と信じるが「英雄、色を好む」はここからきた、という説もある。
でも、何事においても「勘違い」というのは怖い。要すれば「ハーレム」の規模が小さい半端なオスのことだ。男としての自信の根拠に占める「モテる」の割合が高い者は、その状態を維持するためには「モテている」という現実を確保し続けなければならない。
2~3人の素人娘を誑かしているのか、誑かされているのか、その「小規模ハーレム」を守るためには無理もせねばならない。オットセイで言うなら、年老いてからも牙の鋭い若いオスと戦わねばならない。これは結構、キツイ話だ。
「だからこそ強いのだ」と言われたら謝る他ないが、当然ながらそこにはリスクも発生する。それは実に「無駄なリスク」ともいえる。それから大いに勘違いしている部分は否めない。それは「ハーレム」とは隠すものではない、ということだ。堂々と振舞い、それを誇らねばならないはずだ。
つまり、浮気や不倫を世間に隠す、妻に嘘を吐く、人目を避けるなどは本末転倒なのだ。「英雄、色を好むと言うだろが」を酒飲んだときの自慢話、部下や同僚にしかできないなら、直ちに止めるべきだ。
それからどうせ妻にはバレているから、何気に謝罪の意を示すのもよろしい。その妻はたぶん、知っているのに何かと現実的な理由で見逃してくれていたに過ぎない。女神と呼んで差し支えない。どうせ敵わないんだから平伏したほうがいい。
自分がハーレムを持っても良いオスなのかどうか、つまるところ有資格者なのかどうかを判断する基準はいくつかある。とりあえず、
「他にオンナがいると女に言える」
「オンナの数を増やす努力を怠らない」
「いつでも切り捨てることができる」
「お気に入りはいるけど“特定”はいない」
「どれほど女が困窮していようが養わない」
などだと思われる。死語かもしれないが、いわゆる「ジゴロ」だ。ジゴロは浮気がバレても焦らない、というか、焦ったらジゴロじゃない。社会的信用などもハナから持ち合わせていない。お気に入りはくるくる変わるし、気に入らなければ捨てることに躊躇わない。究極の個人主義、カラスの勝手主義でなければやれない。つまり、絶対に本気で惚れない。これは「男」ならわかるが簡単じゃァない。
また、いちばんダメなのは「オレは妻がいちばん。浮気相手は遊びだよ」と当たり前のことを威張って言う安モンだ。これほどダメ男な自己申告もない。「妻がいちばん」なら浮気はダメだし「遊び」と言うならショボいに過ぎる。
オットセイが2頭のメスを引き連れて「ハーレムだ」と威張ったらペンギンにも笑われる。こういう奴に限って浮気がバレると「魔がさした」とか本気で言う。悪魔も「べつにオレはさしてないけど?」と呆れるしかないが、つまりは他の何かの所為にする。これがカッコ悪くないはずもない。
じゃあ、カッコイイのはどういうオスか。
それはキャバクラを持ち歩くレベルの「ジゴロ」か、もしくは「ハーレムのボス」を倒せる力がありながらハーレムを作らず、本能的に寄って来るメスを無難に避けながら、家で待つ最高の伴侶を一生涯かけて大切にするオス、だ。「オレは興味ないから」とクールな痩せ我慢を信念で貫き通す。それで「片牙」だったりすればもう、痺れるじゃないか。