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ビジネスマンにこそ「無駄遣い」という言葉の意味を考えてほしい

お金は誰だってほしいはずです。私だってほしいですし、いくらあっても足りないと思います。心理学的に考えれば、たとえ宝くじで当てた三億円を手にしても、まだ足りない、もっとお金がほしいと考えてしまうのが人間なのだそうです。底なしに欲しくなるんですね。


お金があれば何を買いますか?誰にだってほしいものはたくさんありますよね。私だってあります。さっきから同じ構文で論を展開していますが、書きあげる文章にもループが生じるくらい、お金というものが持つ魅力は単純で、それゆえに底がないのです。

端的に言えば、お金さえあれば「他人の心」と「永遠の命」以外は何でも手に入ってしまうのです。ちょっとドス黒い話をすれば、他人の心だってお金で買収できてしまうことがあるのですが、そういう話に首を突っ込むとこの記事の趣旨から外れるので、今回はやめておきましょう。

お金の使い道そのものは非常に多様性がありますが、人間が生きるために必要なものはそれほど多くありません。落語の世界で「食う寝るところに住むところ」という言葉がある通り、最低限で衣食住の条件がそろえば、人間は寿命をまっとうすることができます。

テレビも、ラジオも、パソコンも、ゲーム機も、その他ありとあらゆる「嗜好品」は、生きていくために必要がないものです。ここで使った嗜好品という言葉は、本来的な用法から少し違ったものになりますが、私の伝えたいことが理解していただければいいと思います。

生きていくために必要がないものを、どうして人は求めるのでしょう。これらのものを買わなければ、多少稼ぎが少なくとも、お金はたまる一方だと思いませんか?それなのになぜ?

よく考えてみると分かりますが、これらの嗜好品は不必要であるように思えて、実は必要不可欠なものなのです。

これらは、心の充足を保つために必要なもの。心の充足というものがあって初めて、つらい仕事にも精を出すことができるわけなので、ストレス解消のための嗜好品は、生活に欠かせないのです。

私もかつて節約という言葉を思い立ち、禁欲的な生活をしようと乗り出した時期があるのですが、結論から言うなら見事に挫折しました。実際のところ、自分の欲望に逆らう節約はそうそうできるものではありません。

節約というものを考えるなら、自分の欲望というものにある程度の優先順位を設けて、無理のない範囲で実行すべきです。自分の欲望を抑えることはできないものなので、自分の欲望とは関係のないところにある無駄を削減することが、本当に意味のある節約です。

うまくリフレッシュするため、ストレス解消のために見込む出費は、無駄遣いではありません。例えばブランド物のバッグを購入するOLさんのことを考えてみましょう。

彼女は、少し値が張るけれども以前からずっと欲しかったバッグを手に入れたことによって、心が満たされ、仕事に精が出るようになりました。その余波としてプライベートも充実して――というような流れは誰にだって考えられるものです。

ブランド物を嫌う人にとっては、高価なバッグ一つでも、所有すること自体が無駄遣いだと考えるでしょう。重要なのは、物の値打ちの感じ方は他人によって全く違うということ。

ある人にとっては宝物になりえるようなものでも、別の人から見ればただのガラクタなのです。それでは、そのガラクタを手にしていることが間違いなのかというと決してそういうことはなく、所持している当の本人が満足しているなら、それは正しいことなのです。

繰り返しますが、自分の心を満たすために必要な出費は、決して無駄遣いにはなりません。私自身、幼いころから読書が趣味で、これまでたくさんの本を読んできましたが、大人になってから自分で自由に使えるお金ができると、どうしても、本を集めたいという欲望が頭をもたげるようになりました。

かくして、私の家にはたくさんの本があります。全て購入したものです。ただでさえ狭い家なのに、これだけたくさんの本があると足の踏み場もないのですが、どうしても好きなものなので譲れません。

今のところ、古書店に売るなどもってのほか、大半が文庫本なので、ホームセンターなどで売っているケースに入れて、大事に保管しています。

本というものは、たった一冊を読破するだけでも大変な時間がかかりますし、例えば音楽のように何度も繰り返して楽しむものではないので、せいぜい三度も読めばもう手に取る機会はなくなります。それでも集めてしまうのです。理由は簡単、本が好きだから。

本に興味がない人から見れば、私の収集癖は無駄遣いのもとにしか見えないでしょう。ところが、繰り返すように物の価値というものは、それを手にする人によってさまざまに異なります。本に興味がない人にとって、文庫本というものはまがうことなきガラクタですが、私にとっては宝物。

つまり私にとって文庫本を購入するために費やすお金は無駄ではないのです。政府が何年か前にやらかしたように、何でもかんでも削減すればいいというものではありません。

一見すると無駄なようでも、よく考えれば無駄ではないものがたくさんあります。一方的な削減だけを考えて行う節約は、自分の心にかかる負担が大きく、結局のところ効率的な節約にはならないので、くれぐれも注意しましょう。

安易な節約本のテクニックに踊らされることがないように。

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