情報の海の中でアンテナを高く広く持つとは、どういうこと?
サラリーマン時代は、よく上司からアンテナを高く持って仕事をするように言われた。今のようにインターネットが普及していない時代だ。新聞やTVのニュースだけでなく、顧客が求めているものを知っておく事は、営業にとって大切な事だ。
例えば、銀行の支店長に会うのに日本経済が語れないようでは話にならない。野球好きの取引先に会うのに昨日のプロ野球結果を知らないようでは話にならない。女の子と飲みにいくのに音楽、芸能、街のトレンドなどの情報を一切持たずに出かけるようでは話にならない。
情報社会だ。情報なんてネットで簡単に入手できると高をくくっていると大間違いだ。情報社会だからこそ、活きた情報が求められている。
『高く』とは、ナマの情報を入手する事
今は多情報時代だ。アンテナを高く持たなくても情報はネットで調べれば簡単に大量に入手できる、アンテナを高くしなくても十分に仕事はできる、と思う人も多いだろう。
『ヤッさん』という小説は情報を糧に生きているホームレスの話であるが、ネット社会での情報というものが何なのかを教えてくれる本だった。ネットに出てくる情報は古い。今朝、築地で市場の人から聞き得たナマの情報を昼には銀座の寿司屋に教えで活かしている。ネット社会の情報は、かくあるべきだ。ネットに流れないような情報を取るべく行動する。
取引先課長の趣味がゴルフなら、よく行くゴルフ場を知っていますか?今日会う女の子が映画好きなら、最近彼女が観た映画を知っていますか?そんな類の情報がナマの情報だ。
『高く』とは、情報に敏感である事
新人たちを見ていると、取引先との会話の中に情報がたくさんあるのに、素通りしてしまっている人が多かった。取引先との雑談で、家族サービスとして週末にキャンプ場にBBQに行ったという話が出た。もう少し話を広げて聞いていれば、釣りの趣味が判ったり、車好きでSUV車が好きだという事が判ったりする。
翌日、ライバル他社が情報を取り、一緒に釣りに行っている間に商談が進んでしまったという苦い経験もある。会話が苦手なら、昔から言われる取材の基本『5W1H』を意識して会話をすると上手にキャッチボールができる。気を付けたいのは、『5W1H』を意識し過ぎると尋問のようになってしまう点だ。時々、自分の感想を織り交ぜながら会話をする事をお奨めする。
『高く』とは、他分野も含め広く情報を入手する事
仕事相手にとっても暇つぶしで会話をするわけではない。相手にとって価値のある存在と会話をするのだ。御用聞きよろしく出かけて行っては、疎んじられるだけだ。ある上司が「アイデアを持ち込んでこない営業マンは追い返す」と言っていた。確かに出入りしている営業マンは、何か一つの変わった使い方を提案している。
例えば、コピー機はカラー消し利用の便利さを言っていた。多種多様にあるコピー機だが、朝会議などで前日のセミナー資料を配布する時に便利だ。メモを青ペンで取り、青字消去すれば良いのだから。コーヒーサーバーの業者は、女性事務職の仕事効率が向上しているというデータを持ってきていた。
しかしアイデアが湯水のようにあふれ出てくる人は珍しい。広く浅く興味を持った事は他分野も含めて情報を仕入れておく事だ。そのままでは使えなくても、考え方やプロセスという点で参考になる事が多い。
『高く』とは、入手した情報を迅速に利用する事
仕事関係のナマ情報は素早く上司に報告しておきたい。ナマ情報は鮮度が命だからだ。日を置いて上司に伝えたところで、上司が情報を活かす機会を逸してしまえば意味がない。ライバル他社に先を越されるだけだ。そんな貴方をライバル他社の営業マンたちは、無能営業マンと陰口をたたいている事だろう。
例えば、来週は取引先係長の奥さんの誕生日だ、という情報を得た同僚がいた。その同僚は、誕生日前日の火曜日に上司に報告をしたが、機を逸してしまった。係長の奥さんは扇子を集めるのが趣味で、上司は週末に京都に行っていたからだ。
他社を出し抜く一つのチャンスを逃し、同僚は報告遅れを叱責された。同僚にとっても上司の京都旅行はプライベートな事なので知る筈もない事だが、ナマ情報は鮮度が命を怠ったための叱責だった。