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23年間会話しなかった夫婦の感動の絆

子供が生まれてから23年間、妻(50)の呼びかけに無言を通した夫(59)がいる。子供たちとは、普通の家庭よりも仲の良い親子のように会話をかわしているのに、妻が話しかけても、頷きすらしない。会話にならない一方通行。喧嘩をしているわけではない、ただただ無言の夫。それでも妻は嫌な顔をせずに、夫に話しかけ続ける。

そんな夫婦なのに、冷たくて、愛情が無いようには感じさせない不思議な家庭の雰囲気。子供たちもだれも優しそうで、とても愛情のない家庭に育ったようには見えない。物心ついたときからこういう状況だったので、最初のうちは自分の家庭が変だとは思っていなかったという。友達の家に行って初めて父と母に会話が無いことが普通でないのだと気付いたのだそうだ。

会話をしなかった理由

あるTV番組が、「両親が話しているところを見たい」という18才の次男(末っ子)の依頼で、この夫婦を取材し、23年の無言の理由を聞き出すことになる。インタビュアーが聞いた本当の理由とは仰天のものだった。

『二人目の子供が生まれたころから、妻の生活が子供中心になってしまい、自分がほったらかしにされるようになり、それがいやだった。』つまり夫が無言になったのは、『拗ねた』という子供じみた理由だったのだ。

当初は妻へのあてつけで返事をしなかったのだが、何年も無言で過ごすうちに今では話しかけるきっかけを失ってしまったのだと言う。それで23年間、無言を通すというのは、意志が強いと言うべきなのか?

圧倒的信頼と絶対的愛情

並の夫婦なら1週間も無言なら耐えられなくなり、ひと月も続けば離婚を考えるだろう。23年間の会話なしは十分すぎる離婚理由になる。それでも離婚もせずに、家庭が続けてこられたのは何故なのか?

妻は多くを語らないが、そこにあるのは圧倒的愛情、そして絶対的な信頼と自信だ。妻は、夫や子供たちをなんの疑いもなく愛している。そして、何も語らない夫も自分を愛していて、必要としていることを無条件に信じている、いや知っているのだ。だからたとえ23年間返事をしない夫とも暮らしてこられた。

夫の方も自分が信じられていること、愛されていることを信じているし、知っている。子供たちもみな、この会話のない両親が自分たちを愛していることに何の疑いも抱いていない。でも最近母は、間もなく夫が定年を迎え、子供たちも大きくなり家を巣立っていった後のことを考えると、やはりしゃべってくれたらいいなと思うようになったのだそうだ。

夫婦の永遠の絆

夫は、ビデオ画面で妻との23年ぶりの会話の練習をさせられるが、まったく上手く話すことができない。最後に妻から『お父さんと話がしたい』と言われ、思い出の奈良公園に呼び出される。それを遠くの木陰から子供たちが見ている。

夫は30分も立ったり座ったり、もじもじしてからやっと話しかける。その様子は、まさに初恋の相手に初めて告白する少年のようだ。絞り出すようにやっと、これまで苦労をかけたことに感謝していることを伝えることができた。それに『有難う、幸せです』と答える妻。お互いの言葉からあふれだす温かい愛情に、見ているすべての人の心が震え、涙した瞬間だ。

少年のように傷つきやすい心を持っている夫と、母のようにそれを包み込んできた優しい妻。会話があっても、愛情の通わない夫婦もたくさんいる。

気持ちを言葉にすること、とりわけ相手に感謝の気持ちを口に出して表現することは、とても大事なこと違いない。でも『たとえ会話が無くても、通い合う愛情がある』ということを教えてくれたこの心優しい家族に、幸い多かれと願わずにはいられない。

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