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強い男の定番スピリッツ『バーボンウイスキー』が愛された理由

ハードボイルド小説では、よく主人公が場末の酒場でグラスを傾ける。グラスの中身はバーボンだ。学生時代は、スコッチウイスキーは紳士の飲み物というイメージだったため、ハードボイルドな強い男を気取ってバーボンをグラスに注いだ。「バーボン=男の強さの証明」と気取っていた。

バーボンウイスキーが愛飲された歴史には、開拓者が辿った足跡が刻まれているからだ。今でこそ、高価なバーボンウイスキーも登場しているが、数十年前、バーボンウイスキーはスコッチウイスキーより安かった。80年代に日本で大ブームになり大量に輸入されたからだ。当時の学生達はバーボン片手に夢を語り、夜を明かした。

アメリカ開拓を支えたバーボン

バーボンは、1700年代半ば、アメリカ西部開拓に挑み入植したイギリス系移民が持ち込んだウイスキー製造技術をベースに作られた。南北戦争後に酒税が導入されウイスキー生産者たちは開拓者たちと共に未開拓地に生産地を移していった。

男達は丸太小屋に住み山を切り拓いて畑を作った。この歴史がバーボンを男の酒とイメージ付けている。TVなどのCMでも『男の酒』としてのイメージが流され、アルコール度数の高いバーボンを前に『これくらい飲めなければ男でない』と学生達はうそぶいた。

開拓者と共にアメリカ東海岸から西部へ移動したウイスキーはケンタッキー州バーボン郡で落ち着く。大自然が織りなす恵みがウイスキー造りに最適だったからだ。主原料のトウモロコシの生産地であり、ライムストーンウォーターと呼ばれる切開層でこされ、鉄分が濾過された水があったからだ。

またバーボン郡という地名はイギリス系移民に続いて入植してきたフランス系移民が『ブルボン王朝』を懐かしんで名づけられた地名で、イギリスのウイスキー技術がフランス系移民の地でアレンジされたことは、いかにもアメリカらしい歴史だ。

バーボンの代表銘柄

80年代学生達はアルコール度数の高い男の酒としてバーボンを飲んだ。だが当時学生たちが飲んだバーボンは今では作られていない。同じ銘柄でもアルコール度数が違う。87年の法改正で50度以上のアルコール度数の酒は40度以下に下げられたからだ。飲み比べた人のコメントではコクがなくなったと評されている。

バーボンの定番といえば、飲めば高いアルコール度数のために七面鳥が暴れたようになると言われた『ワイルドターキー』をはじめ『ジャックダニエル』『I.W.ハーパー』『アーリータイムズ』『フォーローゼズ』などだろう。因みに『ワイルドターキー』の名前の本当の由来は七面鳥ハンティング時に振舞った酒だからだ。これらの銘柄は40代後半~50代の愛酒家には懐かしい銘柄だろう。高級酒となれば『ブラントン』がある。

ウイスキーは生産地名で区分され、次に原材料で区分されている。バーボンはアメリカ産のトウモロコシ主原料の酒だ。主にケンタッキー州のバーボン郡で作られているが『ジャックダニエル』はテネシー州で作られている。

ボトルラベルに『KENTUCHY STRAIGHT BOURBON』とあるのが、正規のバーボンだ。条件は「トウモロコシの割合、アルコール度数、熟成期間、産地、熟成に使用する樽…」といった事項がある。特有の琥珀色は内側を焦がしたオーク樽で熟成されたために現れる。

バーボンはトウモロコシを主原料としているが開拓当初はライ麦を中心としていたようだ。トウモロコシを混ぜるとまろやかさが増すことを偶然発見し主原料となった。今では銘柄の違いはトウモロコシ以外のライ麦、大麦、小麦のブレンドの違いになっている。小麦の割合が多ければ、さらにまろやかさが増すようだ。

熟成の際に樽の内側を焦がす理由については、クレイグ牧師が「樽を置いていた鶏小屋が火事に遭ってしまい偶然にできた」という説、「最初から内側が焦げていた樽を偶然使用した」という説、あるいは「魚が詰めてあった樽の生臭さを消すために仕方なく内側を焦がした」という説などさまざまあるが、詳細については定かではない。

個人的には、トウモロコシを78%使用することで作り出したまろやかさと甘く華やかな香りが有名な『アーリータイムズ』が好きだが、人それぞれお気に入りの一本はあるだろう。プロポーズの逸話を織り込んだ複数の原酒ブレンドの『フォーローゼズ』、力強さとコクを同居させた『ワイルドターキー』、昔ながらの製法にこだわり続ける『ジャックダニエル』、飲みやすさを重視した『I.W.ハーパー』と各酒ごとに特徴はある。頑張っている自分へのご褒美に今夜は一本グラスを琥珀に染め傾けるのも良いかもしれない…

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