臨機応変な「変わり身の術」で、世間の荒波を乗り越えることが大事
他人の言うことにハイハイと従っている方が楽だ、という人がいます。決して一概には言えませんが、こういうタイプは独創性がない代わりに、与えられた仕事を比較的少ないストレスでこなすことができるようです。事務職などには向いているかもしれません。
それに対して、現代社会の中ではちょっと苦労しそうなのが、何でもかんでも他人の歩調に合わせるという姿勢を嫌い、とにかく我流を貫きたがるタイプの人です。
我流を貫くことが悪いと言っているわけではありません。ただ、我流を貫くことのメリットとデメリットを等しく理解しなければ、上司からの思わぬ反発を受けたり、その他さまざまな問題が発生することをくれぐれも覚悟しなければなりません。
あなたの職場にも、常に孤独を愛し、我流を貫き通す人がいるでしょう。どこの職場にもけっこういるものです。そういう人を見て、羨ましいなと感じた人もいるのでは?でも、具体的にはどこが羨ましいのでしょう?
かつての私も、我流を貫くタイプの人が羨ましく思えてならなかったものです。しかしながら、どこがどういうふうに羨ましいのか、冷静な自己分析ができずにいたのです。なにしろ仕事が忙しく、それどころではなかったわけですね。
しかし考えてみれば分かります。我流のメリットというものが。どんな時も自分のペースを貫き通せる人達は、他人の叱責を必要以上に真に受けることなく、上手に受け流せるのです。
うんざりするほどのストレスであふれかえっている現代社会においては、受け流せるテクニックというものは万人に必要なものです。もちろん、マイペースであるがゆえに、同じことで何度も怒られてしまうということはあるでしょう。
けれども、我流を貫く人というのは、怒られること自体を歯牙にもかけず、自分にとって必要な情報だけを選別して頭に入れるので、ふと気がついた時には自分の弱点や欠点を克服しているという面があるのです。やはり羨ましいですね。
かつての日本経済は、不用意に成果主義を取り入れたことで停滞した部分もありました。ここでは多くを語りませんが、成果主義をいち早く取り入れた富士通の闇など、業界の内外問わず有名です。
なぜ日本の社会に成果主義がなじまなかったのかといえば、もともとそんな社会ではなかったからという結論に落ち着ける以外にありません。
新しい制度や価値観が一つの社会の中で浸透するためには、信じられないほど長い時間が必要になります。しかしながら、成果主義の場合は長い時間をかけて浸透させるより先に、富士通の社員たちの心が疲弊してしまったのですね。
働く人たちを評価するためにあるはずの成果主義なのに、働く人たちがプレッシャーに押しつぶされてしまえば意味がありません。
成果主義に向いているのは、どちらかというと独創的で天才肌の人間でしょうが、もともと日本の教育制度は海外のそれとは違い、各人の個性やアイディアについて評価する土壌が整っていません。
つまりは、皆に同じ課題を与えて、その課題を評価できた人だけを評価するというスタイルなのです。そのようなスタイルの中では、本当に値打ちのある成果主義は根付きません。
各個人が「これはよい成果だ」と考えることが、決して万人に認められることがないからです。かといって画一的で面白みのない評価基準を用意すれば、成果主義は息苦しいだけのものになります。ノイローゼ寸前の仕事人間を大量に生み出すことが関の山。
別に「積極的に手を抜け」とか「仕事をさぼれ」といっているわけではありません。私個人の考え方としては、富士通の闇とまで言われる「できそこないの成果主義」と、仕事を頑張っている人をきちんと評価する職場の在り方というのは、決定的に違っているような気がするのです。
別に無理やりな成果主義を導入しなくても、真面目に働いている人を正当に評価することは可能です。
そしてくれぐれも注意しておきたいのは、我流を貫く人ばかりが何でもかんでも得をするというわけではないということです。他人と接する際の態度には、臨機応変な切り替えが必要だと思います。
自分が我流を貫くことを理解してくれる相手に対してなら、ありのままの態度を示してもいいと思うのですが、そうではない場合、つまり我流を嫌煙している相手とコミュニケーションを取る際には、一時的に相手の価値観に合わせて我流を捨てるという覚悟も必要です。
相手に迎合する。相手を認める。これらの態度は、我流を捨てない限りは示せないものですが、一旦は我流をすれることで見えてくる新しい価値観というものも少なからずあります。
我流を貫く生き方について、その一長一短をしっかりと見極めてください。我流を貫くことのメリットとデメリットを理解している人は、私がすでに述べたように、相手の価値観に合わせた働き方ができるので、けっこう得をしています。
どのようなトラブルに巻き込まれても、最後にはこっそり笑うタイプだと言えるでしょうか。ただ単にわがままなだけではなく、自分の取るべき態度をカメレオンのように変化させることができるので、要領よく働けるのです。
ただ、そのご都合主義を見抜いている人には、あいつは誰にでもいい顔をするから信用できない、と思われることがひょっとするとあるかもしれません。
けれども、職場の全員と等しく仲良くできるわけがないので、そういう人とは「合わないもの」と考えて距離を置くのも適切な方法でしょう。