同時進行の仕事が渋滞しない、賢いスケジュールの管理法とは?
聖徳太子の真実
聖徳太子の『豊聡耳』については、ご存じの方も多いと思います。要するに、一度に十人分の要望を聞き分けたというあれですね。その真偽については少し眉唾な部分もあるのですが、いずれにせよ、彼が非常に優秀な事務処理能力を持っていたことは間違いありません。
では、豊聡耳の持ち主は、本当に十人分の声を同時に聞き分けたのでしょうか? おそらく違いますね。常識的に考えて、それほどたくさんの人が同時に喋る声音を判別することはできないはずです。
聖徳太子は、十人分の声を同時に聞き分けたわけではないのです。ただ、重要な要望とそうでない要望、急ぐべき要望とそうでない要望にふるいを掛け、きっちりと優先順位を付けたうえで政務にあたったのだと思われます。そういう意味で聖徳太子は、非常に優秀なビジネスパーソンだったのです。
大きな仕事は常に一つずつ
二つ以上の仕事を同時にこなす、そう言う器用さを持った人がいるとよく言われます。もし本当なら非常に優秀ですが、実際のところ、二つ以上の仕事を同時に片づけることができると言われている人は、本当に二つの仕事を同時にこなしているわけではないのです。これは聖徳太子と同じこと。あくまで優先順位を付けているだけ。
確かに、ビジネスパーソンたるものは一度に二つ以上の仕事を任されるケースなどざらにあります。むしろ、今かかっている仕事が一つだけだという場合の方がよほど稀。でも、それぞれ個人の身体が一つずつしかない以上、作業できる仕事は一つだけです。
かといって、優先順位を付けることも難しい場合があります。どっちも同じくらい大事な仕事。こういう場合は、時間のかかる仕事を先に潰してしまおうというのが私の持論です。大きな仕事というのは、実際に仕事に取り掛かる前の準備段階から時間がかかるものなのです。
具体的なことを言うと、資料集めが大変です。近年ではインターネットが整備されて、情報の収集については以前よりもよほど簡単になりました。それでも、集められる情報の量が増えた分だけ、ビジネスパーソンに求められる仕事の質も上がってしまったのです。要するに、誰でも簡単に集められる情報だけ持ってきても満足してもらえない。情報の収集も、見方を変えれば他人を出し抜くための競争です。それに勝ち抜かなければいけない。だからこそ、情報収集も早めに取り掛かるべき。例えばネットを検索する作業であればスマフォを介しても可能ですから、通勤時間にもできるわけです。
実際に仕事の作業に取り掛かると、家に持ち帰ったり、電車の中で済ませたりということが難しい場合も多いでしょうから、他の仕事のことは考えず、一つの仕事に集中すべきなのです。急がば回れと言えば良いでしょうか。むやみに二つ以上の仕事に手を出さないのが、結局は一番効率の良い仕事術です。スケジュールの管理についてもゆとりを持たせましょう。
よりよいスケジューリングとは、たくさんの予定をいっぺんに詰め込むことではなく、自分が一度にこなせる仕事の量を考えて、無理のない予定を設定することなのです。
優先順位ってそもそも何?
優先順位を付けて仕事をこなせばうまくいく、ということがしばしば指摘されます。私も先ほどこの言葉を使いました。けれども、この言葉は時として無責任で、自分が抱えている仕事に優先順位なんて付けられないという人も多いでしょう。仕事の難易度も、分量も、納期だってほとんど同じ。こういう時はどうすればいいのか
これはあくまで私見なので、参考になるかどうかは分からないのですが、スケジュールの管理に困ったら、自分の得意分野にかかる仕事を率先して片づけるべきだと思います。
誰だって、得意分野と苦手分野を持っています。それは個人にしか分からない場合が多く(それどころか、自分の適性を正しく理解できていない若者も、最近は多いです)その人の特性が分からないために、あなたに仕事を任せる立場にある人(すなわち上司)は、とりあえず仕事を与えなければならないというあいまいな理由で、あなたがあまり得意ではない仕事まで押し付けているという場合があるのです。
これは悲劇です。あなたが任された仕事について、もっと得意としている人が同じ職場内にいるかもしれないのに。仕事のミスマッチを避けるために、得意分野の自己アピールは徹底しましょう。といっても、自分の得意分野を口に出して熱く語るわけではありません。あくまで「質の高い仕事」を見せつけるという熱意で、黙々と仕事をこなすのです。あなたが提出した仕事を上司が見れば、あなたが得意としている仕事の分野が暗黙のうちに分かってもらえるように。
上司に自分の仕事に関する適性が伝われば、苦手分野の仕事は回ってきにくくなります。上司がよほどのバカでない限り。
予定を書き込みすぎず、スケジュール管理は一冊の手帳のみで行う
最後に一口おまけですが、スケジュールの管理を効率よく行いたければ、情報を書き込む媒体(手帳など)を複数に分散させるのは絶対に禁物です。情報を分散させると、絶対に混乱してしまうからです。例えば、ある日に他人と会う予定があるからと、普段使っている手帳ではなく別の紙に殴り書きしたり、あるいはスマフォにメモしたり……。
こういうことをしていると、いざスケジュール手帳を見た時、そこには何も書かれていないから予定を見落とす、というミスが必ず発生します。とっさの時にスケジュール帳を持っておらず、別の紙に殴り書きしたという場合も、後で必ずスケジュール帳にメモしなおすなど、「予定に関する情報を一か所に集める」工夫を徹底してください。
これを見れば自分の予定がだいたい分かる、という手帳が一冊あれば、いざという時も安心です。
かく言う私は、昨年あたりからすべてのスケジュール管理をスマフォで行っているのですが。それは個人の自由ということで。