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自分なりの職業観を練り上げて働くことの大切さに目覚めよう

シゴトって何でしょう。人間は、何かを得るために、何かを失っていく動物だと言えます。仕事人間は、毎日何を獲得して、何を失っているのでしょう。朝も、昼も、夜も、寝ていてさえ、シゴトの夢に身をさいなまれて…。シゴトは敵です。そして、味方です。シゴトは目の前にあるハードルです。そして後方にある足跡です。

シゴトは玉ねぎのようなものだ

職場の仲間たちは、10時11時までの残業が続いています。土日もなくシゴトに追いまくられ、何人かは熱を出して病院の世話になり、それでもベッドから電話してきてシゴトを進めようとしています。女子社員もシゴトに夢中です。自分のタスクに使命感を燃やし、さまざまな困難をものともせず、オヤジ相手の会議にも大わらわの活躍です。

シゴトというものは玉ねぎに似ていて、むいてもむいてもまだ奥があり、ついにはその本質が見えなくなるヌエのような魔物。学校で教わった勉強と違って、答が1つではないから困りものです。それでも社会的意義なんてものを感じているから、社員たちは扁桃腺を腫れ上がらせながらもシゴトにかじりついています。

シゴトがなくなれば自己がなくなる

多くの男たちは、シゴトに取りつかれています。だから彼らにとって、シゴトは言わば「女」のようなもの。つまり、裸にしたのにまだ脱がしたい、女房にしたのにまだ理解しきれていない、際限のない魅力と不可知を宿した玄妙な対象なのです。

男の本心はつぶやきます。「自由も金も魂も、全部あげてもいいから、どうかこのままシゴトをさせてほしい」と。シゴトは男にとって等身大の姿見です。それがなくなってしまうと、自分で自分が見えなくなってしまう、存在そのものを写し出してくれる鏡なのです。それなしでは、自己存在が全く消え去ってしまうほどのものです。

甘ったるい気まずさ

とはいうものの、目をじっと閉じて心の海を泳いでいると、シゴトは束縛だとも思えてきます。契約だとか入札だとか下請けだとか顧客満足度だとか、ごった煮のような業務の向こう側に、自分本来の影が足早に逃げていくのが見えてきます。

「売りて喜び買いて喜ぶ」という理想を追求していた青春時代が、懐かしいセピア色に染まっていきます。女房が「今日も仕事なんですか?」と聞いてくる日曜日の甘ったるい気まずさ。

「女なんぞに分かってたまるか!」と叫んでいる男たちがいます。シゴトは「事に仕える」ことであって、「社会とか神とかいう高い次元の何かに、仕えているんだ!」と言って自己を励まします。

自分はこの世に生まれたとき、その小さな掌に一粒の夢の種を握りしめて出てきた。その種を増やし、心いっぱいに撒き、会社に撒き、社会に撒き、世界中に育ててきたんだ、てなことを自分に言い聞かせつつ、今日も疲れた腰をヨタヨタさせながら晩酌するのです。

答を抱きしめて泣き寝入り

シゴトに空しさを感じた男たちは、テレビのニュースを見て、奥さんを相手に勝手な政談などをぶち上げます。挙句に「いいか、人間の価値というものはだな、今のために何をしていて、守っているものがいくつあるか――、それで決まるんだ」などと酔狂な口を利き、だらしなく畳に寝てしまったりするのです。

こうなるともう、自分がなぜ働いているのかが見えなくなっています。食うために、金のために、とりあえず今の会社に勤務していくしかないという、ただ一つの回答を抱きしめて泣き寝入りです。

ゆとりのある職業観が生まれる

仕事人間にとって、趣味とか余暇とかは二義的なもので、取るに足りないものでした。しかしシゴトで心が折れてしまうと、それらが爆発的に膨らんできて、人生の意味を塗り替え始めます。

シゴトはシゴトで必要ですから、転職してでも命懸けで取り組みはしますが、シゴトだけでない生き方の意味にも気づき、視野が広まってゆとりのある職業観が持てるようになります。

人生のどの段階でそうした覚醒を迎えられるかは個々別々です。20代で転職を繰り返すような人の場合、仕事人間の真摯な取り組みを経験していないために、やはり職業観が淡くなります。金銭にかたよったシゴト観になり、真の生き甲斐をそこから得ることは難しくなるかもしれません。

自分にふさわしいシゴト

シゴトの中には戦場も愛もあります。偽善も謀略も裏切りも感激もあり、喜怒哀楽のるつぼです。まさに、人間の敵であり、味方でもあるのがシゴトなのです。1つの仕事を愛し続けて生涯を過ごせる者は幸いです。職場の中で自己を発現し、才気を伸ばして成功を手にするならば祝福に値します。

でも、何かのわけで会社を首になったとしても、何も絶望することなどないのです。それがシゴトというものです。自分を写す鏡をまた探せばいいのですし、働く意欲さえあればシゴトは必ず見つけられることでしょう。自分にふさわしいシゴトは、自分で選ぶしかないのです。

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