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「がんばれタブチくん」の準主役ヤスダは、実際でも破天荒だった!

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2014.10.29

野球ギャグ漫画の草分け

1970年代後半から80年代にかけて大人気を博した野球漫画に「がんばれ!!タブチくん!!」があった。当時の野球漫画と言えば「巨人の星」のようなスポ根で野球を神聖なものと捉える作品ばかりだったが、この漫画は4コマを中心とした野球ギャグ漫画の草分け的存在だった。

当時は阪神タイガースの四番打者だった田淵幸一(後に西武ライオンズに移籍)のモデルである(というより、本人そのものだったが)タブチを主人公とし、徹底的に茶化していた。それ以前の常識では、野球選手を茶化してはならんという空気が支配的だったが、作者のいしいひさいちは独特の感性により現実の選手にシュールな役柄を与え、たちまち大ヒット漫画となりアニメ映画化までされた。野球の新しい楽しみ方を示したのである。

そんなタブチのライバルとして、ヤクルト・スワローズのヤスダ投手が登場する。ヤスダもタブチに劣らぬ破天荒な人物として描かれ、主役を食ってしまうほどの存在感を示したが、モデルはもちろん現実に存在した安田猛である。

本当にライバルだった田淵と安田

田淵は法政大学、安田は早稲田大学出身で、東京六大学時代から何度も対戦している。漫画の中では二人は同い年のように描かれているが、実際には田淵の方が1歳上だ。

プロ入り後も同じセントラル・リーグに所属していたので数え切れないほどの対決があった。田淵は右の長距離砲、安田は左のサイドハンドで、田淵にとっては与しやすい投手のはずだ。

ところが、田淵は安田を大の苦手としていた。田淵は真っ向から勝負してくる速球投手を得意としていたが、安田はハエが止まるような緩い球をヒョロヒョロと投げてくる。漫画の中でヤスダは、何やら怪しげな魔球を投げていたが、田淵にとって安田のヒョロヒョロ球は魔球に感じられたのかも知れない。

それでも、田淵は安田の記録をストップさせたことがある。安田は1シーズン81イニング連続無四死球というプロ野球記録を持っているが、それを阻止されたのが田淵に対する敬遠四球だった。ちなみに、この記録が始まったのが田淵に対する敬遠四球の次の打者だったから、81イニング連続無四死球の前後がいずれも田淵に対する敬遠四球だったわけだ。田淵を敬遠していなければ、安田の記録はどこまで伸びていたかわからない。

オフシーズンにアルバイト!?

プロ野球選手はオフシーズンになると、シーズン中には出来なかったゴルフや家族サービスに精を出す。ところが安田(現実のほう)はアルバイトをしていたのだ。それもデパートのお歳暮配達という、日当何千円の仕事である。

当時は年俸1億円以上を稼ぐ選手はいなかったが、それでも一軍ローテーションの核だった安田クラスだと年俸1千万円以上は確実にあり、高給取りの部類だった。オフにバイトをする理由があるほど生活に苦しんでいたとは思えない。

漫画のヤスダも行商であざとい商売をしていたので、漫画通りのセコい男だな、とも思えるが、実際はそうではなかった。プロ野球は華やかな世界で、ちょっと活躍すると1年間で何百万円(現在なら何千万円)もポーンと給料が上がるが、現実の社会人は千円の金を作ることすら大変である。ともすれば失いがちになる金銭感覚を、バイトによって養おうと考えたのだ。

しかもお歳暮配達で自転車を漕ぐために足腰の鍛錬になる。つまり、安田にとってのバイトは、

①社会人としての常識を身に付ける
②練習の一貫
③それでいて、小銭も稼げる

という一石三鳥のオフシーズンの過ごし方だったのだ。

契約更改で妻を同伴

安田の金銭感覚は当然、契約更改にも及ぶ。漫画でヤスダは、小学校低学年と思われる娘を契約更改の席に連れてくる。球団フロントから大幅減俸を突き付けられたヤスダは、娘に「ひもじいよー!」と言わせるという泣き落とし作戦に出て減俸を免れる、というエピソードがあった。

もちろん、現実の安田はそんなことはしなかったが、妻を契約更改交渉に連れてきたことがあった。新人王を取った1年目のオフで、結婚したばかりである。安田は新妻と共に、来季の契約に臨んだのだった。

と言っても新妻に「ひもじいよー!」と言わせるためではない(そんなことをしたら新郎の権威失墜である)。亭主が1年間働いた末に新人王という実績を挙げ、その結果としてどれだけの待遇を球団に対して要求し、自分の要望を勝ち取るかという、プロ野球選手にとって最も大事な交渉の場を新妻に見せる、という意味があった。

とても新人選手ができることではない。つまりプロ入り当初から、安田にはプロ根性があったのだろう。

最近の選手はみんな優等生になってしまったので、安田のような選手はなかなかお目にかかれないが、こんな選手もプロ野球には必要だろうと思う。できれば、ギャグ漫画の主人公になれるような選手が出て来てもらいたいものだ。

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