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かわいいうさぎが裁判を起こした?!アマミノクロウサギ訴訟とは?

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2014.03.04

アマミノクロウサギという動物をご存じでしょうか?奄美地方に生息するかわいらしい黒いウサギのことで、現在では開発による森林伐採などにより現在では絶滅の危機に瀕しています。

このアマミノクロウサギはある訴訟において突然注目される存在になりました。いわゆる「アマミノクロウサギ訴訟」です。

この訴訟は1995年に鹿児島地方裁判所に提起されたもので、原告すなわち訴えを提起した者がアマミノクロウサギ、オオトラツグミ、アマミヤマシギ、ルリカケスとなっていたという訴訟でした。

「えっ動物が訴訟を起こせるの?」と思いますよね。訴訟制度に詳しくなくても、裁判を起こせるのは人間だけで、動物など人間以外の生き物が裁判を起こすのはおかしい、と直感的に思いますね。

素人目にもおかしいと感じられるのに、なぜこのような訴訟が提起されるに至ったのでしょうか。

アマミノクロウサギ訴訟の背景

奄美大島では、1990年代から観光目的の開発、特にゴルフ場建設目的の開発が盛んに進められ、それに伴う森林の減少や動植物の絶滅が危惧される状態にありました。実際に、アマミノクロウサギは国の絶滅危惧種に指定されています。

そこで島の環境を守ろうと、自然保護団体が活動を続けていましたが、開発をとめることは困難で、次々とゴルフ場が建設されていました。そのうち、ある企業がアマミノクロウサギの生息する森林にゴルフ場を建設することを決め、鹿児島市に森林を開発する許可を求め、その許可が下りてしまったのです。

自然保護団体はこの許可を取り消してもらうべく、鹿児島県を相手取って訴訟を提起することを検討しました。鹿児島県が出した開発許可が取り消されれば、開発会社も森林を伐採することができませんから、ゴルフ場建設を中止に追い込むことができるのです。

しかし、ここで問題が生じます。ゴルフ場建設に反対している自然保護団体に属している奄美の住民たちはみな建設予定地から離れた場所に居住している人たちで、森林が伐採されてゴルフ場が建設されても直接的な利害関係を有していない人ばかりだったのです。

原告になるために必要な条件とは

人間であっても何でも好き勝手に訴訟を起こすことはできません。国や地方公共団体に対してその許可を取り消すよう求める裁判を起こすには、その許可が取り消されることにつき法律上保護された利益がある者だけしか裁判を起こすことができないと定められているのです(行政事件訴訟法9条1項参照)。

この法律上保護された利益があるというのは、その場所に愛着があるとか、その場所で研究をすることなどは含まず、工事により土砂崩れのおそれがある土地を有することや、健康被害を生じるおそれがあるなどの、取り消しにつき直接的な利害関係をもつことを指します。

アマミノクロウサギ生息地の側に住んでいるわけではない住民たちには、森林伐採の許可が取り消されることによる法律上保護された利益が認められません。つまり、自然保護団体のメンバーを原告として、県に対し許可の取り消しを求める訴訟を提起することができないのです。

そこで苦肉の策として考え出されたのがアマミノクロウサギら、奄美固有の動物たちを原告とする訴訟の提起でした。

自然の権利訴訟とは

このように動物が原告となる訴訟は、自然の権利訴訟と呼ばれ、日本ではこのアマミノクロウサギ訴訟がその初めとなりました。しかしこの訴訟、アメリカでは訴訟を起こすことが認められていたものの、日本ではそうもいきませんでした。

実際に、アマミノクロウサギを筆頭とした動物が原告となった訴訟の提起は鹿児島地方裁判所により、訴状の原告の記載が適切でないので直すようにと命令を受けました。

裁判所が補正を命じたのは、民事訴訟法28条において訴訟の当事者となることができるのは人間と法人(会社など)に限られているからです。この当事者となることができることを、当事者能力がある、という言い方をします。

裁判所はアマミノクロウサギたち動物には当事者能力がありませんので、訴訟の当事者、この場合は原告になることができないので、当事者能力のある人が原告として名前を出しなさいよ、という命令をしたのですね。

自然保護団体はあえて訴状の補正をしなかったので、訴えは却下されましたが、動物が原告となったこの事件は全国のマスコミにより報道され、結果としてゴルフ場開発に国民の目を集めることとなりました。自然保護団体はここまで狙った上で、動物を原告としたようです。

以上が、動物を原告とする初の訴訟、アマミノクロウサギ訴訟が起きた理由でした。この裁判以降、自然の権利訴訟について日本でも積極的な意見が交わされるようになるなど、この事件が環境保護において果たした役割は非常に大きいものでした。もしかしたら日本で動物を原告とした訴訟が認められる日までは、そう遠くないのかもしれませんね。

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