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中学野球部に全国大会はあるのか!?甲子園予備軍の実態

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2013.10.07

伝説の中学野球漫画「キャプテン」

野球少年のバイブルとして故・ちばあきおが描いた「キャプテン」という漫画がある。中学野球を描いた作品で、野球が下手だった主人公が影の努力で上手くなり、さらにキャプテンに選ばれて無名校を引っ張り全国優勝を成し遂げる、という内容だ。

連載が始まったのが今から41年前の1972年だが、未だに根強い人気を誇り、6年前の2007年には実写映画化された。

では、「キャプテン」世界における中学野球の運営はどうなっていたのだろうか。「キャプテン」に登場する中学野球部は、春の選抜大会と夏の選手権大会という二つの全国大会を目指している。そう、構図としては現実の高校野球と全く同じなのだ。

試合のルールは普通の野球と同じ9イニング制で、延長戦も当時の高校野球と同じ18回まで行い(現在の高校野球では延長15回まで)、引き分けだと再試合になる。高校野球と違うのは、硬球ではなく軟球を使用しているということぐらいである。

中学野球の全国大会

では、現実の中学野球はどうなっているのか?これが「キャプテン」世界とは随分違う。全国大会は日本中学校体育連盟(中体連)が主催して毎年8月に行われる「全国中学校軟式野球大会」があり、通称「全中」だ。なお、正式名称にあるように「キャプテン」世界と同じく軟球を使用する。

全中は79年に始まっており、従って「キャプテン」連載開始時にはまだ中学野球の全国大会はなかった。この頃の全中の舞台は横浜スタジアムだったが、現在は全国持ち回りだ。

今年の出場校は25校で、4日間の過密日程であり、一つのチームが1日に2試合行うこともある。ただし7イニング制で、8回に入ると特別延長戦という、タイブレークのような方式となる。なお、中体連の主催では春のセンバツに相当する大会はない。

もう一つの中学野球「全日本」

では、全国大会は年に1回しかないのか、というとそうではない。「全日本少年軟式野球大会」という大会があり、通称「全日本」である。ただし、全日本は中体連とは関係なく、中学生を対象とした軟式野球クラブの大会なのだ。

しかし、中学野球部も参加することができ「○○中学クラブ」と名乗ることもある。なお「キャプテン」世界には中学野球部とクラブチームが対戦する大会は存在しない。

全日本が行われるのは全中と同じ8月だが日程は被っていない。球場は全中から引き継いだ横浜スタジアムで、84年に始まった。出場校数は今年の場合18校で、こちらも4日間の過密日程。準決勝と決勝が同日に行われる。

さらに全日本では、「文部科学大臣杯全日本少年春季軟式野球大会」が2010年から静岡県を舞台に始まった。こちらは「春の全日本」と言い、夏の全日本と同じくクラブチームと中学野球部の大会だ。

今年の場合、秋季大会を勝ち抜いた32チームが集うという、夏の大会よりも大所帯だが、日程は夏より少ない3日間。決勝まで進んだチームは1日2試合が2回もあるという超過密日程である。

軟式と硬式、どちらがいい?

これで大凡の中学野球の仕組みがわかったと思うが、高校野球の強豪校には中学野球出身者は少ない。なぜなら、強豪校に行く選手はほとんどがリトルシニア・リーグやボーイズ・リーグなどの硬式野球出身者だからだ。特に大阪や東京などの都市部にはそれが言える。中学校には硬式野球部はない(大阪には軟式以外に準硬式野球部もある)。

プロを目指すなら子供の段階から硬式野球を経験しておいた方がいいと誰でも思うだろう。だがそうばかりとも言えない。硬式ではグラウンド確保も大変だが、軟式だと使用できるグラウンドが多数あり、さらに体の負担が軽いので毎日でも練習できる。つまり基本の習得なら軟式の方が手っ取り早いというわけだ。

そのあたりのことを、現在は阪神タイガースのコーチを務めている久慈照嘉に訊いたことがある。久慈は強豪の東海大甲府高出身で甲子園にも出場したが、中学時代は軟式でプレーしていた。

「僕が初めて硬球を握ったのは高校に入ってからだけど、特に違和感はなかったですよ。安全面では、子供の頃は軟式の方がいいでしょう」

と久慈は言った。基本的には軟式でも問題ない、というわけである。ただ気を付けなければならないのは、軟式から硬式への移行期に肩を壊しやすいということだ。そこで最近では硬球の感覚に近い「Kボール」という球が考案され、全国大会も行われている。その大会に参加する中学野球部も増えてきたようだ。

それでもリトルシニアやボーイズ出身者の活躍ぶりを見ると、早くから硬式野球を経験させたいと親なら思うだろう。だがイチローや松井秀喜はどうか。彼らは中学時代、軟式野球をしていたが、イチローは日米通算4千本安打を放ち、松井は国民栄誉賞に輝いた。

高校まで硬球を握ったことがなかった男たちが、世界に誇れるメジャーリーガーとなったのである。

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