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台風で近所から大きなゴミが飛んできた。片付けるのは誰?

昨今、日本だけでなく世界の気候が大きく変化しているのか、2013年の10月は大型の台風が次々に発生し、伊豆大島を始めとして首都圏でも土砂崩れなどの大きな被害が出ました。

そこまでの被害が出なかったところでも、強風によって近隣から自分の敷地内に物が飛んでくるなどの問題が生じた場所も多かったようです。

飛んできたのが枯れ葉やらビニール袋ならぶつぶつ言いながら片づければいいですが、大型のゴミが飛んできた場合にはその撤去を業者に頼まなくてはならず思わぬ出費を強いられることになります。

しかしちょっと考えてみると、釈然としないものがありませんか?あなたは別にこのゴミを所有しているわけでもなんでもないのに、たまたま風が自分の敷地に運んできてしまったというだけです。それなのに自分が処理をしなければならないのでしょうか?

そこで今回はこのようにゴミなどが敷地内にあるとき、誰がその処理をするべきなのかについて、法律ではどうなっているのかをご紹介しましょう。

所有権に基づく妨害排除請求権

ゴミが占拠している土地があなたのものなのであれば、あなたはその土地について所有権を有している、ということになります。この所有権とは、民法上認められた権利で、そのものに対して直接的・排他的に支配する権利を持つという権利です。

所有権は非常に強い権利で、この権利に基づく効果として、ものが奪われた場合には返還するように求めたり、支配を妨害されればその妨害を取り除くように求めたり、また予防を求めることができます。それぞれ返還請求権、妨害排除請求権、妨害予防請求権と言います。

今回の例であるゴミが飛来してきたというのは、あなたの敷地を支配する権利が現に侵害されているので、妨害排除請求権を行使することができる状態となります。

ここでまず問題となってくるのが、妨害を排除する態様です。その態様については学説が様々に展開されましたが、特に注目された見解が2つありました。

それは、相手方がそのゴミを撤去するように請求することになるとする、行為請求権説、それとも相手方に自分がゴミを撤去することを認めるように求めるということになるとする、忍容請求権説の2説でした。

前者の見解では、費用は相手に請求できるとされ、後者の見解では請求した側つまり自分がその費用を負担することになるとされました。どちらの見解を取るかによって結論が変わってしまうのですから、これは大問題ですよね。

誰が費用を負担するのか

「えっ、そんなの相手方が負担するんじゃないの?こっちはちゃんと権利を行使しているのだし」と驚く方も多いのではないでしょうか。

確かにゴミを取り除いてもらう権利が保障されているのですから、その取り除く費用を取り立てる権利も当然保障されていると思いますよね。

しかし請求された相手方の立場になってみると、強風が飛ばしたもので、自分でどうこうしてあなたの敷地へ置いたわけではない。それなのに所有していただけで撤去費用を請求されるというのはおかしいという感想を抱くのも無理はないと思えますね。

裁判所は大審院時代にではありますが、相手方、つまりゴミの所有者側が撤去の費用を負担するべきだという判断をしています(大判昭和5年10月31日判決参照)。

しかしこれでは相手側に酷すぎるとして、様々な学説がこの判例の見解を否定したり、修正したりして展開されています。判例の前提としている事例が、今回例に取り上げた台風などによるゴミの飛来などではなく、相手がゴミを不法投棄していった場合などであるということも批判の根拠とされました。

また、相手がゴミの所有権に基づきその返還をあなたに請求してきた場合には、あなたと相手の内どちらが先に請求をしたかによって費用を負担する側が変わることになる点も批判されました。早い者勝ちだというのじゃ、ちょっと納得しがたいですもんね。

しかし今のところ裁判所は自身の見解を覆す判断をしていませんので、現在も妨害排除請求権を行使された相手が費用を負担するということになっています。

ところでこの権利、行使できることはわかりましたが、一体誰に対して行使するのでしょうか。

誰に対して権利を行使するのか

この妨害排除請求権とは、あなたの土地の所有権を侵害しているゴミを除き、元の状態に戻すように請求する権利です。そのため、権利を侵害しているゴミの所有者に対して行使することになります。

ゴミの所有者がわかっていればその人に対して請求すればよいですが、誰のものかわからない場合はどうしたらよいのでしょうか。この場合には残念ですが請求するわけにはいきません。しかし撤去を要求したいほどの大型ゴミならば所有者がわからないことは少ないでしょう。

以上、ゴミの撤去を請求する権利についてご紹介しました。大型ゴミに悩まされた際には是非参考にして下さい。