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自宅の一部が実は道路だった?国に返さなくてはいけないの?

突然ですが、自分の家、またはその他の自分が所有する土地の敷地について正確に知っていますか?「そんなの、住んでたり、普段土地を使っていたらわかるだろ」と思われるでしょうか。

確かに家の敷地がどこからどこまでかなんて、実際に家の立っている部分、もしくは隣地との境に打ち込んである柵の位置を見ればわかる、と思いますよね。

しかし家の建設してある部分や柵の設置場所が、登記簿に記載してある正確な場所と一致しないというのは実は非常にしばしばあることなのです。自宅の一部だと堅く信じていたのに、登記簿で見たら風呂場から先は隣の家の土地の一部だったことが判明して、訴訟になることもよくあるのです。

このように個人同士で土地の所有権を巡って裁判が起こされる場合に問題となるのが時効が成立しているかどうかということです(民法162条参照)。登記簿では隣の人の土地とされていても、一定の条件の下で長期間占有していた場合、取得時効が成立したとして自分のものとして認められることがあるのです。

では仮に自宅の一部が実は国の道路であった場合にはどうなるでしょうか。隣の人の土地であった場合と全く同じように考えてもいいとするのは、ちょっと難しそうですね。そこはやはり国ですから、特別な用件が加味されるような気がしますよね。

そこで今回は、自宅の一部が実は道路として登記されていた場合、自宅として使用してきた土地について時効により所有権を取得することができるのかどうかについてご紹介しましょう。

時効による所有権取得制度とは

時効という言葉は日常でも何気なく使用していますが、その場合はかつてあった権利が時間の経過によって消滅したという意味合いで使用することがほとんどではないかと考えられます。このような時効のことを消滅時効と呼びます(民法166条参照)。

しかし所有権を取得するような時効はこの消滅時効とは性質が異なり、取得時効として別に定められています(民法162条参照)。この取得時効制度とは、もともとは異なる人の所有物であっても、その物を長期間に渡り占有している場合、その事実上の支配を肯定しようとする制度です。

実際に物に対して支配がなされているのに、その人の所有権を否定してしまうのでは取引をする上で安心できません。また時間が経過すればするほど、所有権があったことを証明する書類なども散逸し、証明することが困難になります。そこで、一定の要件の下で時効により所有権が取得が認められることとなっているのです。

この取得時効について規定があるのは民法で、民法は私人間の関係を規律するための法律ですので、先述のように隣人間でその所有権について時効問題が生じた場合には民法の規定に従って問題の解決を図ることになります。

公物に対する取得時効とは

この点、道路についての取得時効を主張するには、民法の規定を直ちに適用するわけにはいきません。やはり私人の持ち物の場合と全く同じ要件というわけにはいかないのですね。

国や地方公共団体が直接公の目的のために共有している物を、公物と言います。公物の中でも、公衆のために提供されるものは公共用物と言われ、公園や海岸、道路などが例としてあげられます。道路などは、公衆のために提供されるために国などが所有してきたのですから、そう簡単に一個人の所有権が認められてしまうのでは困りますね。

そこで、既にその公共用財産が長期間の間公けのために提供されることなく放置されており、公共用財産としての見た目・機能などがすっかり失われている場合に、私人の占有状態が続いていたけれども、その占有により公けの目的が阻害されることもなかったのであれば、その物について私人の所有権が成立することを認めてもよい、と裁判所は判断しました(最高裁昭和51年12月24日判決参照)。

つまり、道路が既に道路として使用できる状態にされておらず、道路としての見た目や機能がすっかり失われているのならば、一個人がそこに家を立てても一般市民が通行できないなどの問題が生じていない場合、その人は元・道路について所有権を時効取得するのだ、と言うのです。

「そんなバカな!」と驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんね。確かにかつては、公けには使用しません、と国などがはっきりと表示した場合以外は公物について時効による所有権移転は認めないとされていたのです。

しかし実際にもう道路として全く機能していないような物についてまで「国ですから」と時効をいつまでも認めないのはあまりにも特別視しすぎとも思われますよね。そこで、現在ではこの見解は採られていないのです。

以上のように国などの財産について時効取得をすることも可能なのです。それゆえに国なども河川敷や海岸などに住居などを構えている人たちに退去するよう求め、時効が成立しないようにしています。

さてあなたの土地は大丈夫?

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