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人気の美容院が実践する、「お客の心をつかむ」顧客管理術とは?

東京都内にTという人気の美容院がある。この美容院、不思議なものでいつでもお客さんが入っている。そして、いつでも次のお客さんが雑誌を読みながら順番を待っている。とにかく、美容師さんが店内のテレビをボーッと見ている光景などは、トンと見かけない忙しい繁盛美容院なのだ。

特に外観も内装も豪華絢爛というわけではなく、店主と思しき美容師さんもお世辞にも美人とはいえない。値段も破格に安いわけではなく、なにやら特殊な技術があるとも思えない。それでも、男女を問わず、いつでも満員御礼。美容師さんは店主を含めて二人しかいないようだが、いつでもお客さんと笑顔で接している。

「何か秘密があるはず」と常々思っていた筆者は、ある時、このお店に飛び込んでみた。実際にカットをしてもらっても、別段特殊な技術があるようにも思えないし、疑問は募るばかり。シビレを切らした筆者は、「ここは一つ…」と店主に日頃の疑問を思い切ってぶつけてみた。

店主は一瞬戸惑いを見せたが、「ちょっと待ってくださいね」と言って店の奥から一冊の分厚いファイルを持ってきてくれた。そこに記録されていたものとは…。

究極の顧客情報がそこに

通常の美容院でも、病院のカルテのように顧客ごとの来店履歴、そして髪質やカットやパーマのスタイルの趣向などをメモして保管をしているところはある。

ただし、この美容院は違った。お客さんと交わした会話の内容が、事細かに記録されているのだ。メモというよりは、まるで議事録だ。少々照れながら、「企業秘密だからね」と笑っていた店主であるが、私はここに顧客管理の究極の「ワザ」が隠されていると感じた。

退屈なカットの時間に交わした店主とのなにげない会話。例えば、お客である筆者が近々草津温泉に旅行に行くトピックなどを話したとする。お客としては、まさかお店の人がそんな話題を覚えているはずもないと思っている。話をした当の本人だって、次回に美容院に行くまでには、どんな事を話したかなんて忘れてしまっているはずだ。

それが、この美容院に行って、「草津温泉の旅行はどうでしたか?」と言われれば、誰しも嬉しくなり、「この人は自分を大切だと思ってくれている」という心理になるはずだ。それが顧客管理を行う「意味」でもあろう。この美容院では、その「意味」を結果に結びつける極めて合理的な「術」が実践されていたわけだ。

相手にするのは同じ人間

美容院という個人顧客を相手にする営業と、主に法人を相手にする企業の営業とでは、必要となる営業スタイルやスキルは大きく違うと言える。ただし、ここで忘れていけないのは、どちらも「人間」を相手にして営業をしているという点だ。この美容院が実践している顧客管理の手法は、企業の営業マンにだって応用可能なテクニックのはずだ。

企業にとっても、顧客情報はいわば会社の資産。過去から現在に至るまで、多くの営業マンが歩んできた「履歴」は、営業日報という形で記録され、膨大な顧客情報データベースとして保管をされている。

営業マンのタイプによっては、商談の内容を事細かに記録する人、あるいはポイントのみを押さえて箇条書きのように記録をする人、その中間の人、とあらゆるタイプがいるだろう。

雑談の内容も詳細に記録しよう

ただし、果たして商談の前に交わされるアイスブレイクの雑談の内容や、商談中にポロッと出てきたプライベートな話題、果ては帰り際に数秒で交わされた話の内容まで、営業日報に記録をしている営業マンはいるであろうか?

ゴルフのクラブを最近変えたとか、もうすぐ孫が産まれる、来月の休みに東北の温泉に行くのを楽しみにしている、息子が来月から中学生、どんな話題でもいいから、雑談で交わされた「商談のポイントではないポイント」を詳細に記録して、ファイルとして保管をしておくようにしたいものである。

会社の営業日報というものは、いわば公的なものであるから、そのような雑談の内容まで記録する事は好まない会社もあるかもしれない。そんな時は、あなた専用の「雑談ファイル」を製作して、自分のみの営業資源としてフル活用すればいい。

アイスブレイクの雑談も、最近の天気がどうだとか、巨人の勝敗が云々のありきたりの話題ではなく、ポイントとなるキーマンのハートをくすぐるようなトークで「差別化」していきたいものである。

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